【論文】産科医療における医薬品不足への対応

本臨床的考察では、医薬品不足の定義、その原因、予測方法、および対応策について検討する。さらに産科医療に特化した、以下の5つの医薬品不足の原因と対応策をレビューしている(以下、論文の要約)。

Penicillin G:静注ペニシリンGの供給不足に対応するため、代替抗菌薬が適切でない患者に使用を限定することが推奨された。分娩時のB群溶血性レンサ球菌予防(Group B Streptococcus:GBS)には静注アンピシリンが代替薬として使用可能とされたが、抗菌スペクトルが狭く耐性誘導の可能性が低いことから、可能であればペニシリンGの使用が望ましいとされた。

Oxytocin:オキシトシン不足に対し、米国産科婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologists:ACOG)などは節約戦略を提示した。具体的には医学的適応のある分娩誘発を優先するなど誘発の優先順位付け、プロスタグランジンや羊膜切開の活用、分娩時に使用したオキシトシンバッグを産後出血予防にも使用する方法などが示された。さらに産後では筋注オキシトシンや、メチルエルゴメトリン(methylergonovine)、プロスタグランジンF2α誘導体(15-methyl prostaglandin F2α)、ミソプロストール(misoprostol)など代替子宮収縮薬の段階的使用が推奨された。

Nirsevimab(Beyfortus):ニルセビマブ(nirsevimab)不足は小児領域に影響したが、代替策として妊婦へのRSVワクチン(Abrysvo)接種により胎盤移行抗体で新生児を保護する方法が推奨された。ACOG、母体胎児医学会(Society for Maternal-Fetal Medicine:SMFM)、米国小児科学会(American Academy of Pediatrics:AAP)は共同声明を出し、妊娠中ワクチン接種の積極的推奨や、既に母体ワクチンで保護されている乳児への不要なニルセビマブ投与を避けるための記録管理の徹底を求めた。また、米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は高リスク乳児を優先する投与指針を提示した。

Rhesus factor D immunoglobulin:RhD免疫グロブリン(Rhesus factor D immunoglobulin)不足に対し、ACOGは優先順位付けと節約策を提示した。父親のRhD型や胎児のRhD型を非侵襲的出生前検査(noninvasive prenatal screening)で確認すること、既に感作された患者への投与を避けること、産後予防投与を優先することなどが推奨された。また妊娠12週未満の人工妊娠中絶や流産では、RoutineのRhD検査および免疫グロブリン投与を省略する方針も示された。

Intravenous fluid:母体胎児医学会(SMFM)は静脈内輸液不足への対応策を提示した。具体的には、可能な場合の経口水分補給、硬膜外麻酔前輸液の見直し、羊水注入プロトコルの再検討、薬剤の経口投与や静注プッシュの活用、GBS予防のセファゾリン(cefazolin)静注プッシュ、筋注オキシトシンの使用などが挙げられた。さらに、病棟安全ミーティングでの使用量確認、電子カルテによる輸液注文更新の管理、看護師による新規バッグ開始前の必要性評価など、システムレベルの対策も推奨された。

 

ニュースソース

Gillian Piltch (Northwell, New Hyde Park, New York, etc.), et al.: Navigating Drug Shortages in Obstetric Care.
O G Open. 2026 Feb 26;3(2):e156. doi: 10.1097/og9.0000000000000156. eCollection 2026 Apr.

2026年3月10日
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