米国病院薬剤師会(American Society of Health-System Pharmacists:ASHP)が最新のDrug Shortageレポートを公開1)。主要ポイントは以下の通り。
- 現在発生中の医薬品不足は216件で、前四半期の214件からわずかに増加したが、2024年第1四半期の過去最高記録である323件からは大幅に減少している。
- 2025年に新たに確認された不足数は89件で、2006年以降で最低の数値である。
- 現在不足している医薬品の15%は規制薬物である。慢性疼痛やADHDの患者は月々の処方箋調剤に苦労する可能性がある。医療システムは手術や処置に必要な十分な供給を確保するのに苦労するかもしれない。
- 今シーズンのインフルエンザ流行によりオセルタミビルの需要が増加しており、薬局での入手可能性に影響を与える可能性がある。
- 長期間にわたる不足は解消され始めている。現在不足している医薬品の4分の3(75%)は2022年以降に不足が始まったものである。
- 不足件数の減少は、必ずしも影響を受ける患者数の減少を意味しない。単一の医薬品不足でも多数の患者に影響が及ぶ可能性があるからだ。
- 不足対応に必要な作業負荷(薬局自動化システムや電子健康記録の変更作業を含む)は、薬局スタッフの不足という課題にさらに拍車をかけている。
本レポートを伝えたSTATは、以下のように伝えている2)。
ASHPレポートで特に注目すべきは、新規に発生した不足が89品目と、約20年で最低水準にまで低下した点である。さらに、現在続いている不足の75%は2022年以降に始まったものであり、長期化していた不足が徐々に解消されつつある兆しも見られる。
一方で、原薬の海外依存、パンデミックによる混乱、製造施設の品質問題、採算悪化による企業撤退など、医薬品サプライチェーン(pharmaceutical supply chain)の構造的課題は解消されていない。加えて、GLP-1受容体作動薬(glucagon-like peptide-1 receptor agonists:GLP-1)のような減量・糖尿病治療薬では、需要急増に供給が追いつかず、大きな影響を及ぼした。
ASHPは、病院や卸がジャストインタイム在庫(just-in-time inventory)に依存している現状では、小さな供給障害でも即座に医療現場へ波及すると警告する。実際、理由不明の不足が59%を占めるなど情報開示も不十分であり、規制薬物(controlled substances)、特にヒドロモルフォン不足は慢性疼痛管理や手術後医療に深刻な影響を与えている。全体として状況改善への「慎重な楽観」はあるものの、患者影響の大きさと供給網の不安定さを踏まえると、問題はまだ終わったとは言えない、というのが本記事の結論である。
- American Society of Health-System Pharmacists: NATIONAL DRUG SHORTAGES JANUARY 2001 – DECEMBER 2025.
https://www.statnews.com/wp-content/uploads/2026/01/2025-Drug-Shortages-Report_FNL.pdf - STAT10: The number of new drug shortages in U.S. hits lowest level in 20 years, but myriad problems remain. (By Ed Silverman, Jan. 22, 2026)(サブスクリプション)
2026年1月26日