Medicine for Europeレポート:抗菌剤の値下がりに対しコスト増が続く

ViatrisとMedicine for Europeとの共同レポート、2025年11月19日公表。

世界的に抗菌薬耐性(AMR)が深刻化する中、欧州で公開された独立研究は、オフパテント抗菌薬の価格が下がり続ける一方で、生産コストとインフレが急上昇し、市場撤退や供給不足を加速させている現状を示した。2020〜2024年で主要抗菌薬価格は平均10%下落したのに対し、製造コストは30%以上、エネルギーは最大88%も高騰しており、代表例のアモキシシリンは供給不足の中心でありながら19%も値下がりしている。また、240品目が市場から撤退し、16か国で385件の不足が同日に報告されるなど、供給の持続可能性は大きく揺らいでいる。

研究を主導した New Angle や Medicines for Europe、Viatris は、こうした状況が患者のアクセスを脅かし、公衆衛生とAMR対策の両面で重大なリスクを生むと警鐘を鳴らす。現行の価格・調達政策が製造の経済性を損ない、供給者を市場から押し出しているとして、物価・コストに連動した価格見直し、極端な低価格を防ぐ最低価格制度、競争状況に応じて柔軟に価格を調整するティアード方式、価格以外に供給信頼性や環境基準を組み込む調達改革など、緊急の政策転換を求めている。抗菌薬は医療の基盤であり、価格下落とコスト上昇のねじれが続けば、欧州全体で治療アクセスが脅かされ、AMRが加速しかねない。Viatris や欧州各機関は、今回の研究が示す危機を契機に、産業界・政策当局・医療者が協働し、抗菌薬を含むオフパテント医薬品の安定供給を守るための持続可能な制度改革を進めるべきだと訴えている。

 

ニュースソース

Viatris, Medicine for Europe: European study shows falling prices, rising costs and shortages – findings released during World AMR Awareness Week.
https://www.medicinesforeurope.com/wp-content/uploads/2025/11/European-study-shows-falling-prices-rising-costs-and-shortages-%E2%80%93-findings-released-during-World-AMR-Awareness-Week-19112025.pdf

2025年12月1日
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