アンジオテンシンII受容体拮抗薬の供給不足後、降圧薬の使用状況と医薬品支出はどのように変化したかについて研究した論文。
2018〜2019年に不純物(N-ニトロソアミン類)によってリコールされた アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB:バルサルタン・ロサルタン・イルベサルタン) について、米国IQVIAの処方データを用いて約1,380万人のARBユーザーと2,340万人の比較薬ユーザーを18か月間追跡した研究である。その結果、降圧薬に対する服薬アドヒアランス(Proportion of Days Covered:PDC)や保険者負担額・患者自己負担額の薬剤費はいずれも大きく変化しなかった。一方で、多くの患者がリコール後90日以内に別のARBや ACE阻害薬に切り替えており、とくに最初のバルサルタン・リコール直後にスイッチ率が急増したことが、治療の中断を防いだと考えられる。
しかし、こうしたスイッチは Medicareや民間保険加入者で大きかったのに対し、低所得者向け公的医療保険Medicaidの出来高払い(Fee-for-Service) や現金払いの患者では増加が比較的限定的であり、薬剤不足時に保険種別によるアクセス格差が生じている可能性が示唆された。全体として、今回のARB不足は代替薬の存在により大きな治療ギャップや費用増大にはつながらなかったが、今後の薬剤不足への政策対応として、低所得層や無保険・十分でない保険加入者も含めて「安価な代替ジェネリックへ円滑に切り替えられる仕組み」を整備する必要があると結論づけている。
ニュースソース
Katherine Callaway Kim (Department of Health Policy and Management, University of Pittsburgh School of Public Health, Pittsburgh, Pennsylvania), et al. : Adherence, Switches, and Drug Spending After Angiotensin Receptor Blocker Recalls and Shortages.
JAMA Health Forum. 2025;6(11):e254078. doi:10.1001/jamahealthforum.2025.4078(オープンアクセス)