英国医療経済研究所OHE:英国議会調査への医薬品供給問題に関する文書提出

医療経済学を中心とした研究所であるOffice of Health Economics:OHEは、2025年10月6日、上院(貴族院)公共サービス特別委員会調査に対して提出した文書の要旨を公開した。この調査は、医薬品供給問題の予測と予防の有効性および将来のレジリエンスに関する調査で、9月23日までウェブ経由での書面意見提出を公募したもの。

OHEの文書では、医薬品サプライチェーン問題の原因として、
1. 医薬品の需要増加
2. 供給側の生産問題
3. 政府の政策、メーカーの戦略、財政的インセンティブの不一致
の3つと、

医薬品不足が患者と現場サービスに与える影響として、不足している医薬品と代替品の価格上昇、医療資源の追加使用、患者の健康への影響を挙げている。
さらに、医薬品不足は、患者と現場のNHSチームが、遅延、処方された治療の中断、仕事量の増加、健康悪化のリスクに直面することも指摘している。

不足対策として重要な事項として、
1. サプライチェーン・モニタリングについて:
・サプライチェーンの多様化への投資
・サプライチェーンの透明性を高め、プロセスの合理化
・医薬品不足を予防または予測するために必要な情報システムの改善、を挙げ、

2. 調達戦略(Procurement Strategies)について:
調達政策が、供給の弾力性を犠牲にして低コストの契約を優先させることにより、不足を悪化させる可能性があるとし、価格競争と供給の多様性および信頼性の保証のバランスをとるための調達改革を指摘している。

 

(関連記事)英国上院は医薬品サプライチェーン強靭化に向けたエビデンスを募集(08月10日公開)

 

(坂巻コメント:サプライチェーンモニタリングと多様性の投資、あるいは不足の購入側要因としての調達のあり方など、日本でも参考にすべき点が多い。OHEは、英国製薬協会(Association of the British Pharmaceutical Industry:ABPI)により設立された医療経済学を中心とした研究所であるが、日本の製薬業界とはレベルが違う。)

 

ニュースソース

Office of Health Economics: OHE’s submission to a parliamentary inquiry on UK drug shortages.

https://www.ohe.org/insights/ohes-submission-to-a-parliamentary-inquiry-on-uk-drug-shortages/?utm_campaign=OHE%20Bulletin&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-8C78eEqklf6bNhhg8HDZbigsKNATwA2e2-nD-NP123CtN0tQwwF1V3jsOgordPoBRttPGsagOt7PlLUgrfHlEFqfGoq5rwnorWvmyQREM3yMxs4xY&_hsmi=385492954&utm_content=385492601&utm_source=hs_email

 

2025年10月17日
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