米国製薬企業は、供給ライン強化のために国内回帰

BioProcess International、2025年7月10日記事。米国の製薬企業やバイオテクノロジー企業が米国への国内回帰を選択しているのは、トランプ政権の関税政策だけではないとする。以下は、記事の要約。

大小の製薬会社やバイオテクノロジー企業は、現在の米国での生産・製造施設を拡大・強化し始めている。 これには、ノバルティスによる 230 億ドルの投資、イーライリリーによる 500 億ドルの投資、ProBio や Piramal Pharma solutions を含む複数の契約開発製造機関(CDMO)による最大 9,000 万ドルの投資などが含まれが、これに留まるわけではない。

多くの施設が無菌注射剤の製造能力を拡充または新設している。無菌注射剤は、皮下投与や筋肉内投与を必要とする多様な医薬品を含み、GLP-1作動薬や抗血栓薬、抗体薬物複合体(ADC)療法、細胞毒性化学療法薬などが該当する。これらの製造には完全な無菌環境が求められ、特殊な設備や熟練した人材が必要であり、そのため供給網の脆弱性が露呈しやすく、製造拠点が限られ、特定施設が唯一の供給元となることもある。

2024年に米国で報告された無菌注射剤の新たな医薬品不足5件のうち3件は、ノースカロライナ州のバクスター工場がハリケーン・ヘレーネの被害を受けて操業停止となったことに起因していた。この工場は3製品の国内唯一の製造拠点であった。

米国薬局方(USP)の2024年版年次医薬品不足報告書によれば、無菌注射剤の98%が高リスク品目とされ、同年12月時点で全医薬品不足の69%を無菌注射剤が占めている。過去10年間、無菌注射剤は米国の医薬品不足統計において常に主要な位置を占めてきた。

これらの不足は海外委託生産によるものと考えがちであるが、実際には不足品目の58%が米国内で製造されており、インド(14%)、EU(12%)と続き、中国製はわずか3%に過ぎない。したがって、最大の要因は、特定施設への過度な依存や地理的集中にあるといえる。

また、単価の低い無菌注射剤は生産コストの高さと利益率の低さから供給不足に陥りやすい。不足品の74%が1単位15ドル未満であり、不足していない製品は平均して13倍高価である。この傾向は、長年市場にある汎用注射薬が特に供給不安に陥りやすいことを示している。

米国の政策も製薬業界に影響を与えている。トランプ政権の関税政策を警戒し、多くの製薬企業は米国内への投資に切り替えを進めている。2024年3月、ファイザーのアルバート・ブーラCEOは、関税変更の影響により米国生産への移行を示唆した。同年には中国に対する追加関税や中国のバイオ医薬品企業が「信頼できない企業」リストに追加された。

一方で、2024年7月には2017年のトランプ政権による「減税・雇用法(TCJA)」が下院で復活し、R&D支出の全額控除や米国内施設への投資減税といった優遇措置が再導入された。

しかし、これらの施策は原薬(API)供給問題には対応していない。多くのブランド品APIは依然として欧州からの輸入に依存しており、関税はむしろ生産コストを押し上げ、短期的には医薬品不足を悪化させるとUSPも報告している。

したがって、米国内で製造拠点が増えても、APIや中間原料(KSM)の輸入依存が続く限り、無菌注射剤の不足リスクは依然として高い。特に低価格なジェネリック注射剤は、コスト上昇と利益の薄さから製造のインセンティブが低く、今後さらに供給不安が深刻化する恐れがある。

米国処方薬の90%はジェネリックで占められており、「米国製処方薬の促進」という政権の声明は、ジェネリック製造や原薬供給への具体的な支援策なしには実現困難である。

 

ニュースソース

BioProcess International: Manufacturing at home: Analyzing recent shifts in US medicine production (by Millie Hoe, Reporter, July 10, 2025)
https://www.bioprocessintl.com/global-markets/medicines-manufacturing-at-home-analyzing-recent-shifts-in-us-medicine-production?utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz–xWG6c3wBMI18o4b5dT2pX_yT7lzatzhsaAeBLNwt-JxTsz4i5jaHma7ddo55RxZMJEfRDYre_4cizy4lGlT3x2ZjPUIQJ2dOH_JVh3g_UJtYHmCQ&_hsmi=371757008&utm_content=371757008&utm_source=hs_email

2025年7月20日
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