【論文】ジェネリック医薬品不足を緩和するアプローチとしての金融証券化

2025年6月17日health Affairs Forefront記事。サプライチェーンの利害関係者は、市場価格と製品供給(つまりスポット市場)の変動に伴うリスクをヘッジする能力が限られているとし、医薬品不足緩和のために価格変動リスクに対して金融証券化を提案している。医薬品価格が変動する米国特有の提案。ただし、市場価格形成についての経済学的考察は興味深い。また、米国における流通と価格形成の仕組みを知る資料としても参考となる。

 

米国の流通・価格形成として以下がある。

  • ジャスト・イン・タイム just-in-time:施設の積極的に予定された要件に従ってサプライヤーから固定原材料/医薬品を購入すること(通常の購買慣行)
  • オフ・コントラクト off-contracts:急な臨床ギャップを埋めるために、病院が事前に交渉した譲歩やボリュームディスカウント以外の治療代替品を購入すること
  • 一方、不足に対する公共や民間セクターの解決策として、供給を確保するためのプロバイダーとメーカー間の長期契約が提案されているが、以下の問題がある。
    • 購入者(例えば、診療所、グループ購買組織[group purchasing organizations: GPO]、薬局給付管理者[pharmacy benefit managers: PBM]、薬局、および病院)がジェネリック医薬品を調達するために使用する一般的な「入札」慣行によって、供給者(例えば、製造業者+/-卸売販売業者)は、購入者からの特定の契約に対して競争入札を行う。
    • これにより、早期に契約を獲得したサプライヤーは、最初の契約から得た資金で生産能力を増強し、その後の契約で競合他社を出し抜く。その結果、短期的には、このプロセスは薬価を引き下げるが、長期的にはサプライヤー間の競争を阻害し、結果的に、長期契約はサプライヤーの統合につながり、医薬品不足を悪化させる可能性がある。

石油、ガス、農業、エネルギーなどの業界の利害関係者は、それぞれの分野で同様の問題を抱えており、価格や供給の変動に対するリスクをヘッジするために、先物契約という形で証券を開発してきた。著者は、他業界の経験をもとに、ジェネリック医薬品への先物市場の適用を提案している。

この仕組みにより、将来的な販売数量が保証され、サプライヤーは薬価の引き下げ交渉に応じる可能性があること、購入者は、将来の医薬品購入価格を保証し、将来の出費を予測できるようにすれば、供給不足リスクをヘッジするようになる可能性を示している。

 

ニュースソース

Joseph T. Kannarkat: Financial Securitization As An Approach To Mitigating Generic Drug Shortages.
Health Affairs Forefront, June 17, 2025 10.1377/forefront.20250613.782262(オープンアクセス)

2025年6月18日
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