KFF(旧称:The Kaiser Family Foundation)は、2026年3月12日、米国メディケイド(Medicaid)の処方薬支出に関するレポートを公開した。
米国メディケイドの処方薬支出は近年大幅に増加しているが、処方件数はほぼ横ばいであり、高額医薬品の影響が大きいこと、またトランプ政権の新たな薬価政策が今後の支出に影響する可能性があるとする。
近年、メディケイドの医薬品支出は増加している。純支出(リベート控除後)は2019年度の310億ドルから2024年度の460億ドルへ46%増加した。一方、処方件数は7億3400万件から7億5100万件へ2%増にとどまり、支出増の主因は高額薬の増加である。特にGLP-1受容体作動薬や細胞・遺伝子治療(Cell and Gene Therapy:CGT)などの高価格の専門医薬品が支出増を牽引している。
メディケイドでは医薬品リベート制度(Medicaid Drug Rebate Program:MDRP)により支出の半分以上が相殺されている。平均すると総支出の約53%がリベートで削減されており、近年は州独自の追加リベート(state supplemental rebates)の割合が増加している。
一方、処方件数の動向を見ると、メディケイド加入者数の変化に影響されている。新型コロナ期の継続加入措置(continuous enrollment provision)により2023年まで加入者と処方件数が増加したが、その終了後は加入者と処方件数の両方が減少している。2025年以降のデータでも処方件数と加入者数は減少傾向だが、医薬品支出は依然として高水準である。
トランプ政権は医薬品価格抑制のため、いくつかの政策を導入している。代表的なものは以下である。
・最恵国価格(Most Favored Nation:MFN)政策:他国と同水準の価格をメディケイドで適用する合意を製薬企業と締結
・GENEROUSモデル:他国価格を基準に追加リベートを交渉するメディケイド薬価モデル(2026年開始)
・BALANCEモデル:GLP-1肥満治療薬の価格引き下げとアクセス拡大を目的とする支払いモデル
・TrumpRx:保険を使わない患者向けに割引価格を提示するウェブサイト
ただし、メディケイドはもともと大幅なリベートにより他の支払者より低価格で薬を購入しているため、MFN価格がどの程度追加の節約につながるかは不明である。また、これらのモデルは州と企業の任意参加であり、実際の効果は不透明である。
さらに、2025年の財政調整法(reconciliation law)によりメディケイド予算削減と加入者減少が見込まれており、保険喪失により低所得者が医薬品へアクセスしにくくなる可能性が指摘されている。
今後の指標として、2025年の四半期データではメディケイド加入者数と処方数は減少している一方、総薬剤費は依然高水準で推移している。高額スペシャリティ薬の増加や新政策の影響により、メディケイド薬剤費の将来動向は依然不確実であると結論づける。
ニュースソース
KFF: Recent Trends in Medicaid Outpatient Prescription Drugs and Spending.
https://www.kff.org/medicaid/recent-trends-in-medicaid-outpatient-prescription-drugs-and-spending/?utm_campaign=KFF-Medicaid&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz–uLyWfOqdsuH3T0NgvdeG0MxflLR53t6Lq3mpXGAX9ZrSJC1E1-0GY0BGPi1uAr9RbP2qV8pwBky4iT-6JoC4FsmMnXVfJ5ZTPsjdFFI-kJ0CaUD0&_hsmi=408681787&utm_content=408681787&utm_source=hs_email