Health Affairs Forefront、2026年3月9日記事。米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)がCAR-T療法のリスク評価・緩和戦略(Risk Evaluation and Mitigation Strategy:REMS)要件を撤廃したことで、治療提供体制を大学病院中心から地域医療へ拡大し、アクセス改善につながる可能性を論じている。
CAR-T療法(chimeric antigen receptor T-cell therapy:CAR-T)は再発・難治性の血液がんに対して治癒の可能性を持つ革新的治療であるが、実際には治療施設が限られており、患者の居住地や社会的条件によって治療を受けられないケースが存在する。例えば治療認定施設から遠く離れた患者は、数週間の滞在や家族支援が必要となるため治療を断念することがある。研究では、治療施設から10マイル遠くなるごとにCAR-T治療を受ける確率が約6%低下するとされている。
CAR-Tは2017年の初承認時、安全性への懸念(サイトカイン放出症候群や神経毒性など)から、FDAがREMS制度を導入し、細胞治療認証機関(Foundation for the Accreditation of Cellular Therapy:FACT)認定を持つ主に大学病院でのみ提供されてきた。しかし現在は毒性評価基準や治療プロトコルが確立され、米国移植・細胞療法学会(American Society for Transplantation and Cellular Therapy:ASTCT)の基準などにより安全管理が標準化されている。
こうした医療現場の成熟を受けてFDAはREMSを撤廃し、監視要件を緩和した。これにより地域病院やコミュニティのがん治療施設でもCAR-T提供が可能となり、患者が遠方に長期滞在する必要が減ると期待されている。実際、地域施設でCAR-Tを受けた患者では短期間の入院で治療を完了できた事例も報告されている。
さらに2025年にはFACTが地域医療機関向けの新たな認証枠組みを公表し、コミュニティ医療でのCAR-T提供を支える制度も整備されつつある。一方で、治療薬の事前購入による資金負担や償還の遅れなど、医療機関にとっての財務リスクが依然として普及の障壁となっている。
そのため今後は、支払い制度の改善、患者データの追跡・安全監視体制の整備、大学病院と地域医療機関の連携などが必要とされる。こうした取り組みにより、CAR-T療法の革新を実際の患者アクセスの改善につなげることが重要であると指摘している。
ニュースソース
William H. Shrank , et al. : The FDA Removed REMS For CAR-T Cell Therapy—Now Community Providers Can Expand Access.
Health Affairs Forefront, March 9, 2026 Doi: 10.1377/forefront.20260303.889113(オープンアクセス)