医療経済学を中心とした研究所であるOffice of Health Economics:OHEは、2025年2月25日英国の費用対効果評価の閾値(cost-effectiveness threshold)見直しを評価しつつ、制度運用の不透明性や政策介入リスクに課題が残ると指摘するレポートを公開した。
2025年12月の米英通商合意の一環として、英国は国民保健サービス(National Health Service:NHS)の医薬品支出拡大と引き換えに医薬品輸出関税ゼロを確保し、これに関連して費用対効果閾値の見直しが発表された。これまで英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence:NICE)の標準閾値(£20,000–£30,000/QALY)は約20年間固定されており、今回の変更は制度が経済・社会環境に応じて進化する前例となるとされる。
OHEは、閾値変更の正式メカニズム導入は資源配分の適応性とステークホルダー信頼向上に寄与すると歓迎している。一方で、閾値変更が実際のNICE意思決定にどう影響するのかは不明確であり、
・すべての医療技術に単一閾値を適用するのか
・プログラム別に異なる閾値を設けるのか
・高度専門医療技術(Highly Specialised Technologies:HST)との関係をどうするのか
など制度設計が示されていない点が問題視されている。
また、手続変更に十分な公開協議(consultation)が伴わなければ、HTAの独立性や資源配分の倫理性が損なわれる可能性があると指摘する。閾値変更そのものよりも、NICEがどのように評価手法へ組み込み運用するかが実際の影響を左右するとされ、政治的意図による運用介入は限定されるべきと強調される。
今後は、独立専門家の関与、透明なエビデンスレビュー、予測可能な見直しプロセスを構築しなければ、頻繁または恣意的な変更が投資不確実性を高め、イノベーションを阻害する恐れがある。さらに、閾値変更の効果は医薬品価格・アクセス・成長自主協定(Voluntary Scheme for Branded Medicines Pricing, Access and Growth:VPAG)など他政策との相互作用も含め検証される必要がある。
結論として、本提案は前進ではあるが、透明性・独立性・運用設計を伴わなければ制度的信頼は確立されないと論じている。
ニュースソース
Office of Health Economics: NICE’s new cost-effectiveness threshold: Significance, consequences, and unanswered questions.
https://www.ohe.org/insights/nices-new-cost-effectiveness-threshold-significance-consequences-and-unanswered-questions/?utm_campaign=OHE%20Bulletin&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-861yL6anuCtR_XgpHjx1M0_5g74IWs6AFlHEejTdCBNzfesaSXVrJgj5DL7w64IHzIfwJOQSEoUAKM-FNds_RVVzR1aM_zXLlXsU4T0VKXJN80L6Q&_hsmi=406295383&utm_content=406034011&utm_source=hs_email