FDA、オーダーメイド遺伝子治療の規制を発表

米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)は、2026年2月25日、個々の患者の遺伝子変異に合わせて設計される治療薬を承認するための新指針として、「妥当な作用機序経路(plausible mechanism pathway)」の詳細ガイダンスを公表した(FDAホームページでは、「意見募集を目的として公表されたもので、拘束力のない推奨事項を含む、非実装用」とされている)1)。

この考え方は、FDA長官Marty Makaryと生物製剤部門責任者Vinay Prasadが、New England Journal of Medicine:NEJM)2025年11月12日公開記事で事前に示していたものであり2)、今回が初の制度化ステップとなる。そのため、NEJM論文と比べると、適用条件の制約を明確化するなど、実務面での具体性が示されているといえる。

具体的には、ガイダンスでは、対象となる遺伝子変異が「患者固有」であること、そして通常の臨床試験が「実施不可能である合理的理由」をスポンサーが説明することを求めており、適用範囲には一定の歯止めが設けられた。また、明確な分子・細胞異常、修正可能なバイオマーカー、前臨床モデルでの有効性確認などが要件とされ、完全な自由裁量ではない点も強調されている。

本件を報じたSTAT、2026年2月23日記事では、この新経路が「超希少疾患治療を制度的に可能にする画期的な一歩」である一方、FDAの運用次第では適用拡大や信頼性低下のリスクも孕んでおり、今後の実装と審査実務が成否を左右すると論じている3)。

 

以下は、公開されたガイダンスの要約。

  1. 本ガイダンスは、特定の遺伝子・分子異常が疾患原因として明確な場合に限り、少数患者(場合により単一患者)データでも有効性・安全性を立証しうる枠組みを示す。
  2. 中核要件は①明確な分子・細胞レベルの異常、②病因に近接した標的治療、③未治療時の自然史(Natural History)の十分な理解、④標的が実際に作用した証拠、⑤臨床的改善の確認、の5点である。
  3. ゲノム編集(Genome Editing:GE)やアンチセンス核酸(Antisense Oligonucleotides:ASO)を主対象としつつ、原則は他の治療モダリティにも拡張可能とされる。
  4. 臨床試験は小規模・単群試験を前提とし、外部対照や自然史データを活用して「偶然や自然変動では説明できない改善」を示すことが求められる。
  5. 有効性の立証は、1つの十分に管理された試験+補強証拠でも可能とされ、迅速承認(Accelerated Approval)の活用も想定されている。
  6. 非臨床では、動物実験に限定せず、新規アプローチ手法(New Approach Methodologies:NAMs)や患者由来細胞等の活用が明示的に推奨される。
  7. 同一遺伝子内の異なる変異に対しては、ガイドRNA等を差し替えた「製品バリアント」を段階的に追加承認する考え方が示されている。
  8. 承認時点で安全性データが限定的となることを前提に、市販後リアルワールドエビデンス(Real-World Evidence:RWE)の収集が必須とされる。
  9. 製造(Chemistry, Manufacturing and Controls:CMC)については、迅速開発を前提に既存知見のレバレッジと早期当局相談が強調されている。

 

ニュースソース

  1. Food and Drug Administration: Considerations for the use of the Plausible Mechanism Framework to Develop Individualized Therapies that Target Specific Genetic Conditions with Known Biological Cause.
    https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/considerations-use-plausible-mechanism-framework-develop-individualized-therapies-target-specific
  2. Vinay Prasad and Martin A. Makary: FDA’s New Plausible Mechanism Pathway.
    N Engl J Med. 2025;393:2365-2367, DOI: 10.1056/NEJMsb2512695(購読が必要)
  3. STAT: FDA unveils rules for bespoke gene therapies, predicting flood of rare disease applications.
    https://www.statnews.com/2026/02/23/fda-rare-disease-new-guidelines-plausible-mechanism-pathway/?utm_campaign=daily_recap&utm_mediu%E2%80%A6(購読が必要)

 

2026年2月26日
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