【論説】米国の医療技術評価においては、米国の価値観で

American Journal of Managed Care(AJMC)、2026年2月12日記事。米国製薬企業の立場に近い政策研究機関である全国医薬品評議会(National Pharmaceutical Council)による論説。米国患者が重視する「迅速なアクセス・治療選択の自律性・幅広い治療価値」と、海外の医療技術評価(HTA)が用いるコスト抑制型の価値判断との根本的な乖離を整理し、米国は外国型HTAを輸入すべきではないと主張する。

米国の患者は、迅速な医薬品アクセスと、医師と共に治療を選択する自律性を強く重視しており、これは過去20年の医薬品イノベーションによって形成されてきた価値観である。米国では、加速承認制度(Accelerated Approval)や希少疾病向けインセンティブにより、他国より早く多くの革新的医薬品にアクセスできる一方、国レベルの医療技術評価(Health Technology Assessment:HTA)を持たないため、医薬品を固定予算内の「コスト」としてではなく、将来の健康への投資として扱う制度設計が維持されている。

これに対し、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、日本、スイス、英国などの国では、政府主導のHTAが医薬品の採用可否を決定し、質調整生存年(Quality-Adjusted Life Year:QALY)などの指標を用いて、集団平均の費用対効果を重視する。その結果、患者ごとの価値観の違いや、症状軽減、就労・家族ケア能力、治療負担、介護者負担、将来治療への橋渡し価値(option value)、保険的価値、希望の価値(value of hope)といった、米国患者が重視する多様な治療効果は十分に反映されにくい。

筆者らは、こうした外国HTAの枠組みは、米国患者が重視する選択の自由・リスク許容度・個別最適化と根本的に相容れず、米国がそれを輸入すれば、医薬品イノベーションへの投資インセンティブと患者中心の医療を損なうと指摘する。今後の医薬品価値評価は、費用対効果モデルを「ルール」ではなく「ツール」として位置づけ、患者を含む多様なステークホルダーによる熟議型プロセスとして設計されるべきであり、医薬品を短期的な支出ではなく、長期的な社会的投資として評価することが不可欠である、と結論づけている。

(💬米国企業寄りの論調ではあるが、自国の価値観を重視せよという論調は頷けられる点はある。日本で実施されている費用対効果評価の大半は、諸外国の価値観に基づくQALYである。)

 

ニュースソース

Julie A. Patterson, et al.: Contributor: American Patients vs Foreign Governments—A Tale of 2 Value Sets.
https://www.ajmc.com/view/contributor-american-patients-vs-foreign-governments-a-tale-of-2-value-sets

2026年2月14日
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