抗VEGF薬として眼科で長年オフラベル使用されてきたbevacizumabの再目的化(Repurposing biosimilars)製剤について、規制当局承認に要するコストを踏まえた「コスト積み上げ型価格」の妥当な水準を検討した経済分析論文
本論文は、もともと抗がん剤として開発されたbevacizumabが、同様の作用機序をもつ抗VEGF薬と比べて著しく低価格であることから、眼科領域(特に網膜血管疾患)でオフラベル使用されてきた経緯を出発点としている。
こうした臨床実態の中で、眼科適応に特化した再目的化製剤であるLytenava®が、近年、欧州医薬品庁(European Medicines Agency:EMA)から正式な販売承認を取得したことを受け、「再目的化製剤はいくらであるべきか」という価格設定の妥当性が新たな政策課題として浮上した。
本研究は、再目的化に伴う追加的な価値を過度にプレミアム化するのではなく、研究開発費、製造コスト、資本コスト(cost-of-capital)などの実際の費用構造を明示的に積み上げる「コストベース+(cost-based-plus)」価格モデルを用い、4つの想定シナリオに基づいて分析を行っている。その結果、眼科用再目的化ベバシズマブ1回投与あたりの妥当な価格帯は73〜177ユーロと推計された。
この分析は、再目的化バイオ医薬品(repurposed biosimilars)の価格形成において、従来の「市場ベース」や「価値ベース」一辺倒の議論とは異なり、規制承認取得に要した合理的コストを反映した透明な価格交渉の基盤を提供する点に意義がある。最終的に本論文は、医療財政にとっての負担可能性(affordability)と、製薬企業にとっての持続可能なリターンを両立させる価格戦略として、コスト積み上げ型アプローチが有効であることを示し、再目的化医薬品における公平な価格設定(equitable pricing)に関する政策的議論の深化を目指している。
(今後、日本にも登場するであろう”repurposed biosimilars”の価格設定のあり方において参考とすべき論文(バイオシミラーロスとなっている日本では承認申請しない可能性もあるが)。)
ニュースソース
Evert A Manders (Medicine for Society, Platform at Amsterdam University Medical Centre, Amsterdam), et al. : Repurposing biosimilars, rethinking costs: a framework for sustainable drug pricing for repurposed bevacizumab for intravitreal injections.
Eur J Health Econ. 2026 Feb 7. DOI: 10.1007/s10198-025-01891-3. Online ahead of print.(オープンアクセス)