中国、バイオテクノロジー分野で形勢逆転

Science、2026年1月29日公開記事。国が生命科学・創薬分野で急速に台頭する中、米国が戦略的に出遅れつつある現状と、その危うさを訴える論考。

米国はこれまで、地政学的競争を背景に大規模な科学研究投資を行い、世界の科学技術を主導してきた。しかしこの優位性は、約20年前から中国の工学・材料科学分野での台頭によって揺らぎ始め、近年では生命科学・バイオ医薬品分野でも中国が急速に存在感を高めている。通常であれば米国は強力な巻き返しに出るはずだが、現政権の消極的な姿勢のもと、十分な対応が取られていないと筆者は指摘する。

中国の科学力の伸長は偶然ではなく、国家戦略として計画的に進められてきた。第14次五カ年計画では、精密医療やバイオ医薬品、先端医薬品製造装置が重点分野とされ、規制改革によって臨床試験や承認プロセスも大幅に効率化された。その結果、中国の臨床試験は従来より30%安く、20~40%短期間で実施可能となり、新薬開発数は8倍に増加。現在では、米国大手製薬企業が導入する新薬の3分の1が中国発となり、創薬力は米国とほぼ並ぶ水準に達している。

この状況に、中国が長期的・継続的に科学の卓越性に投資している点を強調し、米国が傍観者であってはならないと警鐘を鳴らすなど、米国の産業界や投資家は強い危機感を抱いている。一方で米国は、製薬製造の国内回帰を進める一方、創薬の基盤となる基礎科学や人材への投資を弱めつつあり、これは「製造は内製化し、イノベーションは外注する」に等しく、経済的にも非合理だと批判されている。

さらに、科学知識は国境を超えた公共財であるべきだとする。米国の成功は、持続的な研究資金と世界中の才能を受け入れる開放性によって支えられてきたが、いずれも現在は揺らいでいる。中国を排除するのではなく、選択的協調と管理された共存を通じて協力することこそが、生命科学の進歩に不可欠だと結論づけている。

 

ニュースソース

  1. Holden Thorp: China turns the tables in biotech.
    Science, 29 Jan 2026, Vol 391, Issue 6784, p. 427 DOI: 10.1126/science.aef7757
2026年1月30日
このページの先頭へ戻る