英国では、なぜ新生児スクリーニングの導入が遅れているのか

STAT、2026年1月27日記事。英国の新生児スクリーニング制度が国際的に見て慎重すぎるがゆえに、治療可能な希少疾患の子どもが取り返しのつかない障害や死亡に至っているという制度的課題を描く。

英国では新生児に対する血液検査によるスクリーニングが行われているが、対象疾患は10疾患にとどまり、この10年で追加されたのはわずか1疾患である。一方、米国では36疾患、カナダやオーストラリア、EU諸国の多くでも脊髄性筋萎縮症(Spinal Muscular Atrophy:SMA)などが既に対象となっており、英国の慎重姿勢は際立っている。

SMAや異染性白質ジストロフィー(Metachromatic Leukodystrophy:MLD)のような遺伝性疾患では、早期診断・早期治療が予後を決定的に左右する。近年、ZolgensmaやLibmeldyといった遺伝子治療が登場し、症状発現前に投与できれば健常に近い生活が可能になる一方、診断が遅れれば不可逆的な神経・筋障害が残る。

英国の国家スクリーニング委員会(National Screening Committee:NSC)は、国際的な実績があるにもかかわらず、SMAやMLDの追加に慎重で、「英国特有のエビデンス不足」「疾患有病率」「治療費」「長期予後」「偽陽性による心理的負担」などを理由に、全国導入ではなくパイロット評価(in-service evaluation)にとどめている。SMAについても、対象は最大で新生児の約70%に限られ、結果が出るまでに少なくとも1年以上を要する見込みである。

委員会側は、スクリーニングは恩恵を受ける子どもが少数である一方、多数の新生児と家族に不要な不安や追加検査という「害」を与える可能性があると主張する。しかし臨床医や患者団体は、「スクリーニングしないこと自体が深刻な害を生んでいる」と反論する。実際、SMAやMLDでは、治療薬が存在するにもかかわらず、症状発現後に診断され「もう治療できない」と告げられる家族が後を絶たない。

記事では、治療技術の進歩にスクリーニング制度が追いついていない現実と、過度に「害」を恐れる制度設計が、結果として取り返しのつかない被害を生んでいるというジレンマを浮き彫りにしている。

 

ニュースソース

STAT:Newborn screening can save lives, but worries about potential harm slow adoption in the U.K.(By Andrew Joseph, Jan. 27, 2026)

https://www.statnews.com/2026/01/27/newborn-screening-tests-uk-pressured-expand-disease-testing/?utm_campaign=morning_rounds&utm_me%E2%80%A6

2026年1月29日
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