前立腺がん検診は害の方が大きいのか?

STAT10、2026年1月21日掲載のエッセイ。PSA検査による前立腺がんスクリーニングが生んだ「過剰診断・過剰治療」の実体と、その中で著者自身が経験した15年間の葛藤を通じて、前立腺がん医療の構造的問題を問い直す論説記事。

著者は55歳で受けたPSA検査をきっかけに、低リスク前立腺がんと診断され、不要になり得た手術の直前まで追い込まれた経験を語る。PSA検査は感度は高いが特異度が低く、陽性の7割以上が偽陽性である一方、多くの低リスクがんは生涯症状を出さない「沈黙のがん」である。それにもかかわらず、米国ではPSA値を単独で重視する医療文化と経済的インセンティブにより、低リスクがんでも積極治療が選ばれやすく、失禁や勃起障害など重い後遺症を招いてきた。

欧州では年齢別基準や臨床全体像を重視し、監視療法(アクティブ・サーベイランス)が主流で、治療率は米国より大幅に低い。英国の大規模試験では、15年死亡率に治療差はほぼなく、低リスクがんの多くは「共存可能」であることが示された。一方で、PSA検査の縮小が転移がん増加につながるとの反論もあり、議論は続く。

著者は、経済的動機や医療文化、患者の不安(SCANxiety)が介入を後押ししている現実を指摘し、PSAの層別化、AIなど新技術の活用により、不要な治療を避ける精緻なスクリーニングが必要だと結ぶ。自らは検査を後悔しつつも、より良い判断材料があれば選択は変わったはずだと述べ、前立腺がん医療の再設計を訴えている。

(坂巻コメント:日本のがん対策研究所の「科学的根拠に基づくがん検診」2008年度版では、「推奨グレードⅠ(対策型検診では実施しないことを推奨する。ただし、任意型検診では個人の判断で受診可)」となっており、公開当時、泌尿器科学会から多くの反論が出された。最新版(2025年度)でも「50歳以上の男性に対し、利益・不利益のバランス情報を提示した上で、PSA検査による検診実施が推奨されています(弱い推奨)。」)

 

ニュースソース

STAT10:Did my prostate cancer screening do more harm than good?
Doctors still debate how to use the PSA test
(By Howard Wolinsky,Jan. 21, 2026)

2026年1月26日
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