JAMA Netw Open、2026年1月21日online 公開論文。高齢化するHIV患者集団とQALY(質調整生存年)に依存できなくなりつつある医療経済評価の制約を背景に、高齢HIV患者向け介入の「価値」をどう測り直すべきかを論じた論考。
米国ではHIV患者の高齢化が進み、フレイルや転倒が健康面・経済面で大きな負担となっている。一方、インフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)により、メディケアの薬価交渉では高齢者や障害者の延命価値を低く扱う指標が禁止され、質調整生存年(quality-adjusted life year:QALY)を用いた従来の価値評価が実質的に使えなくなった。この「ポストQALY時代」に対応するため、著者らは新たな価値評価枠組みを提案している。
具体的には、
- 日常生活動作の自立を維持できた年数を評価する機能的自立年(functional independence years:FIY)、
- 患者本人に限らず家族への影響を捉える介護者負担(caregiver burden)、
- 救急受診や入院回避などを通じた医療システムのレジリエンス(health system resilience)
といった代替的ベネフィット指標を提示する。
同時に、価値評価では利益だけでなく害も独立して評価すべきとし、運動や減薬に伴う介入関連の害(intervention-related harms)、アクセス格差を拡大させる公平性・構造的害(equity and structural harms)、他の医療に資源を回せなくなる機会費用(opportunity cost)を明示的に考慮する必要性を指摘する。さらに、高齢者が地域にもたらす知識や経験といった社会的資本(social capital)への影響も、従来の個人中心の評価では見落とされてきた重要な価値であると論じている。
結論として、QALYは今後も一つの指標として残り得るものの、高齢者医療、とりわけHIV患者のフレイル対策では、患者・家族・地域・社会全体の価値を多面的に捉える新たな評価枠組みが不可欠であり、ポストQALY時代はその構築に向けた挑戦であると同時に大きな機会であると位置づけている。
ニュースソース
Ivo Abraham (Center for Health Outcomes and Pharmacoeconomic Research, R. K. Coit College of Pharmacy, University of Arizona, Tucson, Arizona) et al. : Valuing Frailty Prevention in Aging in the Post-QALY Era
JAMA Netw Open, Published Online: January 21, 2026, 2026;9;(1):e2554817.
doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.54817 (オープンアクセス)