【解説】WHOの新たなGLP-1薬剤ガイドラインについて知っておくべきこと

JAMA Medical News、2026年1月9日オンライン公開記事。WHOがGLP-1肥満治療薬を初めて正式に位置づけ、肥満対策を「生活習慣」から「慢性疾患医療」へ転換させた歴史的転機を描いた論考。

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米国ではGLP-1受容体作動薬(セマグルチド、チルゼパチドなど)の普及と同時期に、成人肥満率が約40%から37%へ低下し、760万人分の肥満が解消された。WHOはこの流れを受け、肥満を「再発性の慢性疾患」と定義し、GLP-1薬を条件付きで正式治療として初めて推奨した。

ガイドラインは、肥満が遺伝・代謝・社会環境など複合要因で生じる疾患であり、高血圧や糖尿病と同様に長期管理が必要であると明確化している。これにより「自己責任」というスティグマからの脱却を狙う。

一方で推奨は「条件付き」である。長期安全性や生涯投与の必要性はまだ不確実で、膵炎や視神経障害などのまれな副作用も懸念されるため、GLP-1は行動療法(食事・運動・カウンセリング)と併用する多面的治療の一部と位置づけられた。

最大の課題は公平なアクセスである。現在の生産能力では、世界の必要人口の10%未満しかカバーできず、高価格と供給制約が格差を拡大させる恐れがある。WHOは価格引き下げ、プール調達、強制実施権、現地生産、経口薬の開発などを政策手段として示している。

さらに重要なのは持続性で、GLP-1を中止すると体重が戻りやすく、半数以上が1年以内に中断する現実がある。低用量維持や運動併用など、「生涯ケアだが必ずしも生涯投薬ではない」新しいモデルが模索されている。

WHOは今後5年を「肥満曲線を曲げる最後のチャンス」と位置づけ、予防的な環境整備・ハイリスク者の保護・肥満患者への生涯ケアという三本柱への転換を呼びかけている。GLP-1は魔法の弾丸ではないが、糖尿病・心血管疾患・脂肪肝などの連鎖的な健康被害を断ち切る公衆衛生レベルのゲームチェンジャーになり得るとする。

 

ニュースソース

Kate Schweitzer (Associate Managing Editor, Medical News, JAMA): What to Know About the WHO’s New GLP-1 Drug Guideline.
JAMA, Published Online: January 9, 2026, doi: 10.1001/jama.2025.25208(オープンアクセス)

2026年1月10日
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