米国の非営利組織Institute for Clinical and Economic Review(ICER)は、2025年12月16日、肥満治療におけるセマグルチドおよびチルゼパチドの肥満治療に対する比較臨床効果と価値を評価する最終エビデンス報告書を発表した。最終報告書には、公正なアクセスを確保するための主要な政策提言が含まれている。
肥満は慢性かつ高コストな疾患であり、米国では約4割の成人が該当し、併存症や社会的スティグマを通じて個人と医療制度に大きな負担を与えている。
GLP-1受容体作動薬セマグルチド(注射・経口)およびGLP-1/GIP二重作動薬チルゼパチドは、生活習慣介入単独と比べて大幅な体重減少と代謝指標の改善をもたらした。体重減少効果はチルゼパチドが最大であり、注射セマグルチド、経口セマグルチドがこれに続く。注射セマグルチドは心血管疾患を有する肥満患者で主要心血管イベントおよび死亡リスクを低下させたが、他剤の心血管ベネフィットには不確実性が残る。治療中止後の体重再増加が認められ、長期管理の必要性が示唆される。有害事象は主に消化管症状で、重篤な有害事象や中止率は低かった。
ICERは3剤すべてについて「高い確実性で実質的な健康便益あり」と評価したが、薬剤間比較は限定的と結論づけた。費用対効果分析では、3剤はいずれも1QALYあたり10万ドル未満で費用対効果が高いとされた。一方で予算影響は極めて大きく、現行価格では対象患者の1%未満しか治療できないと推計された。そのためICERは、価格引き下げ、保険適用拡大、スティグマのない包括的肥満ケアの推進を強く提言している。
ニュースソース
Institute for Clinical and Economic Review: Semaglutide and Tirzepatide for Obesity: Effectiveness and Value.
https://icer.org/wp-content/uploads/2025/12/ICER_Obesity_Final-Report_For-Publication_121625.pdf