トラスツズマブは承認から20年を経ても、HER2陽性早期乳がん治療の中核薬であり続けている。主要な術後補助療法試験の長期追跡により、リスク群や化学療法レジメンを問わず、生存率の持続的改善が示されてきた。心毒性(TIC)は全体としてまれで、特にアントラサイクリン非使用例では治療終了後、一般集団と同程度とされる。リアルワールドデータも、長期有効性と安全性を支持している。皮下投与製剤の登場や、費用対効果に優れたバイオシミラーの普及により、臨床的意義はさらに強固になっている。一方で、HER2過剰発現・増幅以外に、治療選択を導く確立した予測バイオマーカーは存在しない。TIL、循環腫瘍DNA、HER2DXなどの候補はあるが、臨床応用には至っていない。
心毒性リスクを早期に示唆する臨床因子や画像指標はあるものの、有効な心保護戦略は確立されていない。新規抗HER2薬が登場する中でも、特に低リスクHER2陽性早期乳がんでは、トラスツズマブは今後も治療の基盤であり続けると考えられる。
ニュースソース
G Gentile(Université libre de Bruxelles (ULB), Hôpital Universitaire de Bruxelles (H.U.B), Institut Jules Bordet, Bruxelles, Belgium, etc.), et al. : 20th anniversary of adjuvant trastuzumab: reflections on a breakthrough moment.
Ann Oncol. 2025 Dec 10:S0923-7534(25)06316-1. doi: 10.1016/j.annonc.2025.12.002. Online ahead of print. (抄録のみ)