米国FDA、性感染症治療のための経口治療薬2種類を承認

米国食品医薬品局( Food and Drug Administration:FDA)は、2025年12月12日、性感染症治療に用いる2つの新しい経口薬を承認したことを発表した1)。

承認された薬剤のうち、Nuzolvence (一般名:zoliflodacin、承認企業Entasis Therapeutics)は、水溶性顆粒剤で、体重77ポンド(約35kg)以上の成人および12歳以上の小児における合併症を伴わない単純性淋菌性尿道炎(uncomplicated urogenital gonorrhea)に用いられる。もう一つは、経口錠剤のBlujepa (gepotidacin、GSK)で、体重99ポンド(約45kg)以上の12歳以上の患者 に用いられる。本剤は、臨床的安全性データが限られているため、他の治療選択肢がほとんどない、あるいは全くない患者を対象とする。また、Blujepaは2025年3月に尿路感染症治療薬として承認されている。

FDAの承認に先立ち、両剤を紹介したScience 誌によれば、gepotidacinは、アストラゼネカの研究者によって開発された抗生物質で、細菌がゲノムを複製する際にDNAを解きほぐすために使用するDNAジャイレースという酵素の働きを阻害する。他の抗生物質もDNAジャイレースを標的とするが、ゾリフロダシンは酵素の異なるサブユニットに結合するため、既存の耐性を回避できる。アストラゼネカが抗生物質研究を中止した後、スピンオフ企業Entasis(現Innoviva)は非営利団体「グローバル抗生物質研究開発パートナーシップ( Global Antibiotic Research and Development Partnership :GARDP)」と提携し、淋病治療に特化した本薬剤の開発を進めたとする。

さらに、新規抗菌薬が2剤登場したことで、これらを「温存すべきか」「早期から使うべきか」という使い方を巡る議論が本格化していると伝える。
従来型の慎重な考え方では、治療失敗が増えるまで新薬を使わず取っておくべきだとされがちである。しかし近年の数理モデル研究では、新薬を温存するよりも、既存薬との併用や患者ごとの使い分けの方が、耐性出現を遅らせる可能性が示されている。一方で、これらのモデルは前提条件が多く、現実の臨床を完全には反映していない。たとえば、注射薬であるセフトリアキソンと、経口投与可能な新薬では性質が大きく異なる。また、米国の特定集団を前提とした分析結果が、他国や高耐性地域にそのまま当てはまるとは限らない。

研究者らは今後、実際の導入戦略を検討する追加研究を進める予定である。ただし最終的に薬剤の使われ方を決めるのは現場の医師であり、研究者が完全に制御できるものではない。さらに、新薬が2剤あっても淋菌の耐性問題は解決しない。咽頭感染への効果は未確認であり、将来的な耐性出現を前提に、ワクチンや予防策、継続的監視を含む多面的対策が不可欠であるとしている(記事を要約)2)。

 

ニュースソース

  1. Food and Drug Administration: FDA Approves Two Oral Therapies to Treat Gonorrhea.
    https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-two-oral-therapies-treat-gonorrhea?utm_medium=email&utm_source=govdelivery
  2. Kai Kupferschmidt: New antibiotic for gonorrhea could help beat back drug-resistant infections.
    Science, doi: 10.1126/science.zkmg70h
    https://www.science.org/content/article/new-antibiotic-gonorrhea-could-help-beat-back-drug-resistant-infections?utm_source=sfmc&utm_medium=email&utm_content=alert&utm_campaign=WeeklyLatestNews&et_rid%E2%80%A6(有料記事)
2025年12月15日
このページの先頭へ戻る