【論文】日本における抗がん薬の価格設定、価格修正、臨床的価値

Front Pharmacol掲載論文。この論文は、日本の抗がん剤の初期薬価プレミアムと薬価改定が、臨床価値(European Society for Medical Oncology–Magnitude of Clinical Benefit Scale:ESMO-MCBS)とどの程度結びついているかを包括的に検証した研究。著者らは中国の瀋陽薬科大学ビジネススクール所属。

日本で2013–2023年に承認された94の抗がん剤(119試験)を対象に、臨床価値と薬価の関係を分析したところ、初期薬価のプレミアムは高い臨床価値をある程度反映していた。実際、プレミアムありの薬剤はESMO-MCBSが有意に高く、プレミアム割合が大きいほどスコアも上昇していた。

一方で、日当たり治療費と臨床価値(OS延長、PFS延長、ORR、ESMO-MCBS)との間には関連がほぼなく、薬価全体としては臨床価値と連動していなかった。これは、日本の薬価算定方式(類似薬効比較方式の下限拘束、原価計算方式の構造的限界、費用情報開示要件など)が価格と価値の乖離を生むことにも起因している。

さらに、薬価改定による価格変化も臨床価値とは無関係で、ESMOが高い薬剤でも低い薬剤でも同程度の薬価引下げが行われていた。改定は主として市場実勢価・販売額に連動しており、価値保護の仕組みは限定的だった。

そのため、著者らは、日本の薬価プレミアム制度は「高臨床価値を見つけて初期薬価に反映する」という点では一定機能しているものの、初期薬価全体の“価値連動性”や薬価改定段階での“価値保護”は不十分であり、さらなる制度改善が必要と結論付けている。

(中国に指摘されたくない?)

 

ニュースソース

Jiaqi He (School of Business Administration, Shenyang Pharmaceutical University, Shenyang, China), et al. : Pricing, price revision, and clinical value of anticancer drugs in Japan: a retrospective observational study.
Front Pharmacol. 2025 Nov 18;16:1641775. doi: 10.3389/fphar.2025.1641775. PMID: 41341034; PMCID: PMC12668999. (オープンアクセス)

 

2025年12月9日
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