【論説】米国における肥満治療薬のアクセスと手頃な価格の向上

Health Affairs、2025年12月3日記事。

2025年11月、ホワイトハウスは Most Favored Nation(MFN)政策の下で、リリーとノボがGLP-1肥満治療薬の価格を大幅に引き下げると発表し、数百万人に手が届く価格水準を提示した。

Medicareは注射製剤を月245ドル、経口剤(未承認)は150ドルで購入でき、TrumpRx経由では約350ドルとなるが、Medicaidの実質価格はリベート次第で不透明。これによりアクセスは改善する見通しだが、保険者がカバレッジ拡大を判断するには需要増と予算影響を慎重に見極める必要がある。Medicareでは月50ドルの患者負担が可能になり、インスリン同様、利用開始と継続に大きく寄与すると見込まれる。

一方、GLP-1治療が費用対効果(value)としては改善していても、対象人口の大きさと長期継続使用のため、財政的なアフォーダビリティ(budget impact)は依然深刻。価値が高くても利用が増えれば支出は増えるため、CMSが期待する「2年で予算中立」には慎重な見方が必要である。今後の財政中立の可能性は、さらなる価格低下、バイオシミラー参入、低価値医療削減、用量または治療期間の減少などに依存する。特に支出の多くは減量維持期の長期投薬コストであるため、用量減、間欠投与、低価格薬や行動療法・栄養支援といった代替維持戦略の評価が必要となる。

ホワイトハウスの値下げ合意は、肥満対策の歴史的チャンスだが、短期的支出増を理由に普及を止めるべきではなく、賢い薬剤使用と無駄な医療費削減が鍵となる。総じて、GLP-1の価格改革はアクセス改善と長期的な健康恩恵をもたらし得るが、財政持続性の確保には新たな利用管理と維持フェーズ最適化が不可欠となる。

 

ニュースソース

David D. Kim, et al. : The President Weighs In: Improving Access And Affordability Of Obesity Medications.
Health Affairs Forefront, December 3, 2025, 10.1377/forefront.20251121.5715(オープンアクセス)

 

2025年12月4日
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