JAMA Netw Open、2025年11月11日公開論文。バイオシミラー参入がMedicare Part Bにおける先行バイオ医薬品の価格にどの程度影響しているかを、従来よりも精緻な方法で評価した論文。
米国ではバイオ医薬品が処方薬支出の約半分近くを占め、医療費高騰の主要因となっている一方、コスト削減の切り札と期待されたバイオシミラーの普及と価格低下効果は、欧州と比べて限定的である。主な要因として、Medicare Part BにおけるASP+%加算方式や340Bなどの支払い構造が、必ずしも低価格なバイオシミラーに経済的インセンティブを与えていないこと、患者自己負担の差が小さくスイッチの誘因が弱いこと、さらに先行品メーカーの戦略的価格設定・マーケティングや処方医の慎重姿勢が指摘されている。
既存研究は「参入直前価格との単純な前後比較」にとどまり、もともと先行品価格が上昇し続けたであろう反事実の価格トレンドを十分に考慮していない可能性があるため、本研究では合成対照を用いて、バイオシミラー競争が実際にどの程度価格を押し下げているのかをより正確に評価することを目的としている。
本研究では、Medicare Part BのASPデータ(2005–2025)とFDA承認情報を用い、7つのバイオ医薬品について、バイオシミラー参入がなかった場合の「反事実の価格」をBayesian Structural Time Seriesモデルで推計し、実際の価格との差を比較した。解析の結果、先行品ASPは反事実に比べて1年後で平均7%、3年後で32%、5年後で43%低下し、バイオシミラーはさらに大きく1年後19%、3年後48%、5年後65%低下していた。成分別ではペグフィルグラスチムやインフリキシマブで大きな値下げが生じ、フィルグラスチムでは先行品が価格維持戦略を取るなど、多様な競争パターンが確認された。全体として、バイオシミラー参入は従来推計より大きな価格抑制効果を持つ一方、小分子ジェネリックほど劇的な値下げには至っていなかった。
ニュースソース
Abdelaziz A, Winn AN, Dusetzina SB, Mitchell AP. Biologic Drug Prices in Medicare Part B After Entry of Biosimilars to the Market. JAMA Netw Open. 2025;8(11):e2542937. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.42937(オープンアクセス)