【論文】妊娠中の母親によるアセトアミノフェン使用と子孫における自閉症スペクトラム障害および注意欠陥・多動性障害のリスク:システマティックレビュー

2025年9月、米国大統領は、子宮内で本薬に曝露された子供における自閉症リスクを理由に、妊娠中のタイレノール(アセトアミノフェン)使用を控えるよう勧告した。論文は、妊娠中のアセトアミノフェン(パラセタモール)使用と小児期の自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder (referred to as autism、日本語で「自閉症」と略)と注意欠陥・多動性障害(attention deficit/hyperactivity disorder :ADHD)との関連性の強さを評価するため、システマティックレビュー(アンブレラレビュー:複数のレビューを「傘(アンブレラ)」のようにまとめるもの)を実施したもの。結論は「現存する証拠は、妊娠中の母親によるパラセタモール使用と、その子孫における自閉症やADHDとの間に明確な関連性を示していない」とされる。以下、論文の抄録の抜粋。

目的 妊娠中の母親によるパラセタモール(アセトアミノフェン)使用と、子孫における自閉症スペクトラム障害(以下、自閉症と称する)および注意欠陥・多動性障害(ADHD)のリスクに関するエビデンスの質、バイアス、妥当性を評価すること。

対象基準 妊娠中の母親によるパラセタモール使用と子孫における自閉症またはADHDの診断を報告した、無作為化試験およびコホート研究、症例対照研究、横断研究の系統的レビュー。レビューに含まれた一次研究の詳細を報告する。これには主要な交絡因子(母体の特性、パラセタモール使用の適応、家族的要因)および測定不能な交絡因子に対する調整、ならびにアウトカムの確認が含まれる。

結果 子孫における自閉症(6研究)およびADHD(17研究)について報告した9件のレビュー(40研究)が対象となった。4件のレビューがメタ分析を実施した。レビューに含まれる一次研究の重複率は非常に高く(補正カバー率23%)であった。レビューは、母体のパラセタモール摂取と子孫における自閉症またはADHD、あるいはその両方との間に、可能性のあるものから強い関連性を報告した。9件のレビューのうち7件は、対象研究におけるバイアスや交絡の潜在的リスクを理由に、結果の解釈には注意を促した。AMSTAR 2(系統的レビュー評価ツール)基準に基づくレビュー結果への信頼度は、低い(2件)から極めて低い(7件)であった。家族的要因と測定不能な交絡を兄弟対照分析で適切に調整した研究(n=2)を包含したのは1件のみであった。いずれの研究においても、子孫における自閉症リスク増加(1研究:ハザード比1.05、95%信頼区間1.02~1.08)およびADHDリスク増加(2研究:1.07、1.05~1.10および2.02、 1.17~3.25)は、兄弟対照分析では持続しなかった(自閉症:0.98、0.93~1.04、ADHD:0.98、0.94~1.02および1.06、0.51~2.05)。

結論 現存する証拠は、妊娠中の母親によるパラセタモール使用と、その子孫における自閉症やADHDとの間に明確な関連性を示していない。

 

ニュースソース

Jameela Sheikh (Institute of Life Course and Medical Sciences, University of Liverpool, UK), et al. : Maternal paracetamol (acetaminophen) use during pregnancy and risk of autism spectrum disorder and attention deficit/hyperactivity disorder in offspring: umbrella review of systematic reviews.
BMJ 2025; 391 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2025-088141 (Published 10 November 2025) Cite this as: BMJ 2025;391:e088141(オープンアクセス)

2025年11月18日
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