【論文】バイオシミラーの価値評価:管理医療組織のための費用対効果アプローチ

米国では600以上のバイオ医薬品が承認されている一方、バイオシミラーは約69剤にとどまり、その採用状況には大きなばらつきがある。論文は、ニューヨーク州メディケイドと契約するManaged Care Organizations(MCO)が、バイオシミラーをどのようにフォーミュラリー(採用薬)に位置づけているかを評価することを目的としている。特に、価格差・費用対効果(ICER)および臨床的有効性と安全性を比較し、なぜバイオシミラーの採用が進まないのか(制度的要因)かについて考察した。

対象とした薬剤は以下の3製剤。

  • 関節リウマチ(RA):アダリムマブ(Cyltezo vs Humira)
  • クローン病(CD):インフリキシマブ(Avsola vs Remicade)
  • 1型糖尿病(T1DM):インスリングラルギン(Semglee vs Lantus)

分析は、年間治療コストと臨床効果を基にICERを算出し、支払い意思額(WTP)は 50,000ドルを基準とし、フォーミュラリー導入状況を調査した。

3品目の評価結果の概略は以下の通りで、3分野すべてでバイオシミラーは臨床的にも費用的にも優れていた。

(1)アダリムマブ:Cyltezo vs Humira
  • 臨床効果:Cyltezo 69% vs Humira 64.5%
  • 年間コスト:$6,600 vs $107,992.82
  • ICER:–225万ドル(Cyltezoが圧倒的に優位)
(2)インフリキシマブ:Avsola vs Remicade
  • 臨床効果:Avsola 68.1% vs Remicade 59.1%
  • 年間コスト:$24,000 vs $50,500
  • ICER:–29.8万ドル(Avsolaが優位)
(3)インスリングラルギン:Semglee vs Lantus
  • 臨床効果:同等
  • コスト:$1,775.76 vs $4,896
  • → Semgleeは費用最小化(cost-minimization)に最適

バイオシミラー採用が進まない理由として、以下を考察している。

  • リベート契約に依存するフォーミュラリー構造:先行品メーカーのリベートが強く、バイオシミラーが上位に配置されない
  • インターチェンジアビリティ(自動代替)の制限により、多くの州で薬局レベルの切替が制限されている
  • 医師・患者の心理的抵抗や情報不足
  • MCO・PBMの事務手続きや事前承認(PA)などの運用上の障壁

 

ニュースソース

Vishwanauth Persaud (Department of Social, Behavioral and Administrative Sciences, Touro College of Pharmacy, New York), et al. : Assessing the Value of Biosimilars: A Cost-Effectiveness Approach for Managed Care Organizations.
J Pharm Pract. 2025 Nov 3:8971900251394782. doi: 10.1177/08971900251394782. Online ahead of print. DOI: 10.1177/08971900251394782

2025年11月11日
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