【論文】日本における医療技術評価における企業分析と公的分析の差異に関する調査

2025年3月までに日本の医療経済評価(論文では医療技術評価「HTA」)制度下で評価された31製品について、企業分析と「公的分析」(=厚労省分析、「公的」とはおこがましい)との差異について検討した論文。

結果は、31製品にわたる74の分析対象集団のうち、48.6%で追加的便益の評価、アウトカム指標、分析手法に関して、企業分析と公的分析との間に不一致が認められた。アウトカム指標と手法における不一致は、2022年4月の日本のHTA制度及びガイドライン改訂後に増加した。増分費用効果比(ICER)の差異は、生活の質(QOL)パラメータやベースライン仮定の違いに起因するケースが多かった。QALYでは十分に捕捉されていない属性に対して有用性等加算が認められた製品では、そうでない製品に比べ、企業分析と公的分析間のICER差異が大きかった。企業分析では、データ不足や臨床試験における比較対象の欠如から、特に希少疾病用医薬品の評価において間接治療比較に依存することが多いが、公的分析では不確実性を理由にこれらの手法を承認する頻度が低かった。

本調査結果は、QOL評価、希少疾病用医薬品、QALYでは捉えられない属性など、企業分析と公的分析間の差異を浮き彫りにしている。他国のHTAシステムを考慮した明確な指針の提供が評価の一貫性向上に寄与し得ると結論付けている。

 

(坂巻コメント:著者らは製薬企業所属。ガイドラインの明確さの必要性を指摘しているが、本来は正しい指摘である反面、日本の医療経済評価は薬価引き下げの仕組みであり、「公的」側としては、費用対効果を悪く見せるための裁量を残すことが重要。
実際、本論文にある通り、「公的」側は、費用対効果が悪くなるように、採用するエビデンスや比較対照、モデリングなどなど、企業分析に言いがかりともいえるいちゃもんをつけてくる。)

 

ニュースソース

Yoko Hirano (Japan Access & Value Pfizer Japan, Inc., Tokyo): Investigation of Differences Between Manufacturers and Public Analyses in Health Technology Assessment in Japan.
J Health Econ Outcomes Res. 2025 Oct 31;12(2):173-182. doi: 10.36469/001c.144530. eCollection 2025. DOI: 10.36469/001c.144530(オープンアクセス)

 

2025年11月11日
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