トランプ政権は2025年11月6日、ノボノルディスク社とイーライリリー社が製造する人気の肥満治療薬へのアクセス拡大に向けた合意を発表した。
- 基本枠組み：GLP-1（肥満・糖尿病治療薬）を大幅値下げ＋公的保険でのアクセス拡大
- Novo Nordisk（Wegovy/Ozempic）と Eli Lilly（Zepbound等）が、
Medicare / Medicaid向けに月額245ドルで薬剤を提供。 - Medicareの自己負担は50ドル。
- 商業保険も同等の割引を受けられる。
- 市販価格は本来約1000ドル/月 → 自費購入でも**約350ドル（2026年〜TrumpRx）**へ。
- Novo Nordisk（Wegovy/Ozempic）と Eli Lilly（Zepbound等）が、
- 対象となる患者（Medicare/Medicaid）
BMIと併存疾患に基づき、以下のリスク群へ拡大：
- BMI > 27 + 前糖尿病 or 心血管疾患 or 脳卒中歴
- BMI > 30 + 高血圧（治療抵抗性）or 進行腎疾患 or 心不全
- BMI > 35
※すでに一部は現行要件でカバーされているが、
今回の拡大で全体の約10%（Medicare/Medicaid）が新たに対象になると推定。
※Medicaidは州ごとに“オプトイン”方式。
- Medicare Part Dでの新制度
- 2026年：任意のパイロットとしてPart D保険者が費用負担なしでカバーできる。
- 2027年：義務化される。
※現在Medicareは“減量のみ目的”ではGLP-1をカバーしていないため、
制度上の大転換に近い。
- TrumpRxの直接販売価格（DTC）
2026年1月〜：
- Wegovy/Ozempic：350ドル
- Zepbound・orforglipron（承認後）：平均346ドル
- 今後24か月かけて注射薬の価格は250ドルまで低下。
- 経口剤（新規）は149ドルで提供予定。
- 企業側が得るメリット
取引は“相互取引（quid pro quo）”：
- FDAの優先審査バウチャー（PRV）付与
- Lilly：orforglipron
- Novo：経口Wegovy
- 関税（tariffs）の免除（米国内製造を拡大する条件つき）
- Medicaid向け“最恵国価格（MFN）”を確約：既存薬・新薬すべて
- FDAの優先審査バウチャー（PRV）付与
- 財政インパクト：増えた患者数 ≒ 大幅割引で相殺 → “財政中立”と主張
- 政権は「上流の健康改善（肥満改善）が長期で1,750億ドルの節約を生む」と説明。
- 価格交渉（IRAのMedicare薬価交渉）とは別枠の政策。
- 政治的インパクト
- 肥満治療は米国で“慢性疾患対策の最重要領域”と位置づけ。
- 長年民主党がリードしてきた“薬価引き下げ”の政治テーマで、
トランプ政権が主導権を奪いに行く構図。 - 交渉は数か月に及び、“応じない企業には不利益があり得る”と囁かれていた。
- 制度的・公衆衛生上の論点
メリット
- 肥満→糖尿病・心血管疾患など複数の慢性疾患を抑制。
- 人口規模での治療アクセス改善で、健康アウトカム向上が期待。
リスク・課題
- 任意制度（特にMedicaid）やDTC価格が高すぎ、格差拡大の懸念
- GLP-1の“離脱方法（off-ramp）”や生活習慣との相互作用など、科学的知見がなお不足
- 複雑で不透明な米国薬価体系の中で、
実際に消費者価格が下がるかは不透明
ニュースソース
STAT: Trump announces deal with Lilly, Novo to expand access to weight loss drugs, cut prices. (By Daniel Payne and Elaine ChenNov. 6, 2025)
https://www.statnews.com/2025/11/06/trumprx-weight-loss-drug-discounts-wegovy-zepbound/?utm_campaign=daily_recap&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-_6_jpqJqBQym3jKcLgyJ3s2tnEnm3-HfGvXWvbYA1nvT5RKPNF-V74MoXiCkHPkDASQ_UaW9rGX6fye6-l4cXfBghL9itZ_ujb9c9EMyVTjwOjvUo&_hsmi=388781692&utm_content=388781692&utm_source=hs_email（サブスクリプション）