Health Affairs誌、米国医薬品関税をめぐるパネルディスカッション

Health Affairs Podcast 2025年10月24日。「米国における医薬品関税」をめぐる議論がテーマで、トランプ政権下での政策、ファイザーとの取引(Pfizer deal)、そして経済的影響についてのディスカッション。以下は、発言者ごとのポイント(Chat GPTによる要約)。

💬 Jeff Byers(司会、コンテンツクリエイター兼ストラテジスト)

  • 導入と背景
    • 2025年10月22日に収録。テーマは「医薬品・関税・経済」。
    • トランプ政権が10月1日から「医薬品への関税(pharmaceutical tariffs)」を課すと発表したが、その後の展開は不透明。
    • ファイザーが政権と取引を結んだことで、関税の発動が保留中。
  • 目的
    • 医薬政策の専門家(Stacie)と経済学者(David)を招き、政策の経済的・産業的影響を議論。
  • 話題の誘導
    • Tariffの仕組み、Pfizerの取引の内容、産業への波及効果、TrumpRx(直接販売サイト)などを順に質問。

🧠 David Simon(経済学者/University of Connecticut)

① Tariffの基本構造と影響

  • Tariffの仕組み
    • 輸入時に課される税であり、支払いは主に「輸入業者」=米国企業または消費者側。
    • 先行研究(第1次トランプ政権やバイデン政権下の関税)では、企業と消費者がコストを分担して負担してきた。
  • 価格転嫁
    • 通常、25%の関税なら約12.5%、100%の関税なら約50%が消費者価格に転嫁される可能性。
    • 医薬品は「需要が非弾力的(inelastic)」で、価格が上がっても購買が減りにくいため、消費者負担が大きくなる傾向。
  • 研究開発への影響
    • 関税で企業の利益が減ると、研究開発投資にも影響し、特に希少疾患や収益性の低い領域でのイノベーションが減るリスク。
  • インフレ効果
    • 関税は物価上昇(inflationary effect)を引き起こす可能性があり、連邦準備制度(Fed)は「一時的」と見ているが、継続的インフレのリスクも否定できない。
  • 病院への影響
    • 病院(特に地方)も医薬品を購入するためコスト増の影響を受ける。
    • ACA補助金の失効などと重なると、経営圧迫の懸念。

💊 Stacie Dusetzina(薬価政策専門家/Vanderbilt University)

① Pfizerの取引(Pfizer deal)の実態

  • 概要
    • トランプ政権からの要求:
      • Medicaid向けに「最恵国価格(Most-Favored-Nation pricing)」を導入すること。
      • 一部医薬品を現金決済(cash pay)で直接消費者へ販売すること。
      • 他国と同水準の価格設定を行うこと。
    • Pfizerの譲歩内容
      • 一部薬剤で価格引き下げ・最恵国価格適用。
      • 「選定市場(select markets)」に基づく新薬価格設定。
      • “Trump Rx” という直接販売サイト構想を発表。
      • 米国内での製造投資拡大を約束。
      • 見返りとして3年間の関税免除を獲得。
    • ただし、取引内容は不透明で、企業間の合意は非公開。

② Tariffを企業がどう受け止めているか

  • 脅威としての関税
    • 「象徴的だが実害もありうる」圧力手段として企業が譲歩。
    • 実際に被害を受けた他産業の事例を踏まえ、製薬業界も「現実的な脅威」と受け止め対応。
  • 影響の違い
    • 同じ疾患領域でも、競合の有無で影響が異なる。
    • 代替薬のない領域では、コスト転嫁が直接保険料上昇などに波及。
  • 不確実性の問題
    • 関税だけでなく、FDA審査の遅延・政府閉鎖・人員流出などが投資家心理を冷やしている。
    • 結果的に、製薬投資とイノベーションが萎縮する可能性。

③ 米国製薬産業の規模と重要性

  • 国民生活への浸透
    • 成人の約60%が直近1か月で何らかの処方薬を使用。
    • 慢性疾患・急性疾患の管理に不可欠で、社会的関心が非常に高い。
  • 支出規模
    • 小売薬局ベースでは医療費全体の約10%。
    • 医療機関投与薬も含めると最大30%近く。
  • 人気と課題
    • ワクチンやGLP-1製剤(肥満治療薬など)で社会的注目が高い一方、供給不足や高価格問題も顕在化。

④ Trump Rx構想

  • 概要
    • 製薬会社が自社ブランド薬を直接販売するオンラインプラットフォーム。
    • トランプ政権の「医薬品価格低下」要求への対応策の一つ。
    • 複数の企業が同様のサイトを立ち上げており、Trump Rxはそれを集約・検索できる形。
    • GoodRx(ジェネリック比較サイト)との連携構想も。
  • 問題点
    • 保険未加入者向けの“現金決済(cash pay)”販売だが、実際の価格は100ドル~数千ドルと高額で、多くの人には非現実的。
    • 保険加入者がこれを利用すると、保険の自己負担上限を満たせず結果的に損をするケースも。
    • 一部企業では、保険カバレッジを制限する動きも出ており、副作用的な負の影響が懸念される。

🏁 総括(ディスカッション全体のまとめ)

  • トランプ政権の医薬品関税は、**「価格引き下げを企業に迫る交渉カード」**として機能している。
  • Pfizerの取引を皮切りに、他の製薬企業も個別交渉に応じつつあるが、透明性は極めて低い
  • 関税自体は企業・消費者双方にコストを転嫁し、最終的には医療保険料や消費者価格を押し上げるリスク。
  • 不確実性の高まりが、医薬品開発投資とイノベーション低下につながる懸念。
  • Trump Rxのような直接販売モデルは象徴的ではあるが、実質的なアクセス改善策にはなっていない

ニュースソース

Jeff Byers, Stacie B. Dusetzina and David Simon: Podcast: Pharmaceutical Tariffs Explained: The Will-They-Won’t-They Story of 2025. DOI: 10.1377/hp20251023.953071(オープンアクセス)

2025年10月27日
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