Lancet、2025年10月25日公開記事。医薬品価格を挙げれば革新が進むことにエビデンスはないとする論説。Lancetは世界的に権威ある医学誌(JAMA、BMJ、NEJMとならぶ世界4大トップジャーナルの一つ)で、もともと英国系(現在は、ロンドンとニューヨークに編集室を持つ)。以下、要旨。
英国では主要製薬企業が約20億ポンドの投資計画を撤回し、政府の医薬品支出不足を理由に挙げている。NHS薬剤費の低さが研究開発投資を阻害すると業界は主張し、政府はNICEの費用対効果閾値を25%引き上げる検討に入った。一方で、製薬業界は2000〜2018年に8兆ドル超の利益を得ており、薬価と投資との直接的な関係は証明されていない。実際のイノベーションの多くは大学や公的資金を受けた中小バイオ企業が担い、大手製薬は他社買収に依存している。さらに、利益は再投資よりも株主配当に充てられており、薬価上昇はイノベーションではなく株主を利する構造を助長している。政府が真に製薬投資を呼び込みたいなら、薬価引き上げではなく、科学人材育成や研究基盤整備など、長期的に革新を支える環境整備に資金を投じるべきである。
ニュースソース
Editorial: Drug pricing and pharmaceutical innovation: a false promise.
Lancet, Volume 406, Issue 10514p1923October 25, 2025
2025年10月25日