【論文】米国医薬品のジェネリック承認におけるリスク評価と軽減戦略の影響

Health Affairs、2025年10月6日オンライン公開論文。

米国では、特定の高リスク医薬品についてリスク評価・緩和戦略(risk evaluation and mitigation strategy:REMS)プログラムが導入されている。REMSプログラムは、ジェネリック医薬品についても対象となる。論文では、REMSプログラムがジェネリック医薬品の承認を遅らせるのではないかという懸念に対し、2000年から13年の間に承認された新規低分子医薬品のデータセットを用い、2024年までのジェネリック承認とリンクさせ、REMSプログラムがジェネリック承認に与える影響を評価している。

特許期間、承認時期、承認された適応症、箱入り警告の有無、希少疾病用医薬品の有無、薬剤の使用状況をコントロールして検討した結果、REMSプログラムの有無がジェネリック医薬品の承認が25%遅れることと関連していることが明らかとなったとする。

 

Risk Evaluation and Mitigation Strategy(REMS)とは、医薬品の有効性を保ちつつ、重大な安全性リスクを最小化するためのFDAが要求する特別なプログラムで、新薬(ブランド薬)だけではなく、ジェネリック医薬品でも同じ有効成分を持つ場合には、ブランド薬と同じREMS要件が課されることがある。

ジェネリックは「参照医薬品(Reference Listed Drug:RLD)」と同じ有効成分・効能を持ち、ブランド薬にREMSがあれば、それを基本的に「共通REMS(shared system REMS)」として適用される。FDAは、同じ有効成分のジェネリックメーカーがバラバラにREMSを作るのではなく、ブランドとジェネリックが協力して1つの共通REMSプログラムを運用することを推奨している。

REMS対象薬を処方できるのは、薬の重大リスクや安全な使い方に関する研修を修了するなど、FDAのREMSプログラムに登録した医師だけで、対象薬を扱う薬局も、REMSプログラムに参加して承認を得る必要がある。さらには、患者も、REMS対象薬を受け取るためには、患者自身もプログラムに登録が必要なことが多い。妊娠していない証明、血液検査、避妊の実施など、ルールを守る必要があったり、医師や薬剤師からの教育資料を受け取り、理解した上で服用することが求められる。

日本の薬局に対する「ハイリスク薬加算」のような適当な仕組みとは異なる。

参考;Food and Drug Administration: Risk Evaluation and Mitigation Strategies | REMS

 

ニュースソース

Jennifer Kao(University of California Los Angeles, LosAngeles, California), et al. : Impact Of Risk Evaluation And Mitigation Strategies On Generic Approvals Of US Pharmaceutical Products.
Health AffairsVol. 44, No. 10https://doi.org/10.1377/hlthaff.2024.01476 (オープンアクセス)

2025年10月8日
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