日本の再生医療の挫折

  1. 武田薬品、細胞治療研究の最新情報を発表

Takedaの2025年10月1日の公式発表によれば、同社は戦略的ポートフォリオの見直しに伴い、細胞治療(cell therapy)領域から撤退する決断を下した。の決定は「戦略的ポートフォリオの優先順位付けプロセスの一部」であるとしている。

同社は、既存の細胞治療プラットフォーム技術や臨床準備プログラムについては外部パートナーを活用し、移行・継続を図る意向を示している。今後は、低分子薬、バイオ医薬品、抗体薬物複合体(ADC) など、より迅速かつ規模展開が期待できる治療モダリティに近時的投資を集中させる方向性。総額約 580 億円の減損損失を、ガンマデルタ T 細胞治療プラットフォーム関連の無形資産に対して計上する見込みである。ただし、その大部分は既に 2025 年度の通期見通しに見込み済みとされている。

 

  1. ノボ・ノルディスク、ハートシード社との契約を終了。

ノボ・ノルディスクは、日本の再生医療ベンチャー、Heartseedハートシード社とのコラボレーションを終了した。ハートシード社の2025年9月30日の発表資料によると、ノボ ノルディスク社が糖尿病・肥満に事業を集中させる戦略見直しの結果、ハートシード社との契約を終了することとなった。2021年に署名された契約は、最大5億9,800万ドルとされる。

 

(坂巻コメント:世界的に細胞・遺伝子治療(Cell and Gene Therapy:CGT)の開発は停滞傾向にある。その背景には、有効な候補品の開発が思うように進まないことに加え、極めて高額な価格設定によって先進国においてもアクセスが受け入れられない事例が増えていることが挙げられる。それでも、CGTが有効性を示す治療領域はなお多く存在する。武田薬品は1990年代にバイオ医薬品開発から撤退し、その後の創薬力低下につながった経緯があり、今回の決定も再び同じ轍を踏む恐れがある。
一方で、日本企業の大半が、1990年代にバイオ医薬品開発から撤退したことで、国内バイオ医薬品は絶望的な状況にある。その結果、経済産業省を中心に再生医療への注力が進められたが、再生医療においても技術力の不足が明らかになったと考えられる。世界的な科学誌 Nature は、日本の再生医療開発や薬事規制に対して批判的な論説を掲載している。)

 

ニュースソース

  1. Takeda Pharmaceutical Company Limited: Takeda Provides Update on Cell Therapy Research.
    https://www.takeda.com/newsroom/statements/2025/takeda-provides-update-on-cell-therapy-research/
  2. Heartseed Inc.: Supplemental comments regarding termination of partnership with Novo Nordisk A/S.
    https://ssl4.eir-parts.net/doc/219A/ir_material2/261077/00.pdf
2025年10月4日
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