米国の医薬品、医療制度に関する研究機関National Pharmaceutical Council(NPC)は、2025年9月、CAR T細胞療法に関するPolicy & Evidence Briefを公開した。以下の内容が含まれる。
- CAR T細胞療法の定義
- CAR T細胞療法が現在の他の治療法とどう異なる
- 米国で承認されたCAR T細胞療法の現状。
- CAR T細胞治療の将来性。
- 将来の方向性が患者のアクセスにどう依存するか
このうちの「将来の方向性が患者のアクセスにどう依存するか」の要旨。
CAR-T細胞療法は命を救う可能性があるが、実際にはアクセスの遅れが大きな障害となっている。患者と介護者の経路は①認知と診断、②治療開始(先行治療の完了・紹介・保険承認)、③CAR-T投与(白血球アフェレーシスと輸注)、④治療後モニタリング、⑤長期的支援と生活復帰の5段階に整理できる。この全過程は平均で約40か月を要し、特に「他治療を使い果たす」要件が最大の遅延要因である。さらに、治療決定から投与まで2か月以上かかることも多く、保険承認や地理的制約によって遅延が増幅される。民間保険は公的保険より認可に2.5倍長くかかり、個別契約が必要な場合は50日超の遅延が生じる。地理的にも低所得者や黒人・ヒスパニック系患者は受療率が低い。その結果、紹介された患者のうち実際に治療を受けられるのは25〜38%にとどまり、待機中に病状悪化で適応を失う例も多い。しかし近年、早期治療ラインでの承認拡大、安全性改善、リスク管理制度の緩和、遠隔モニタリングや外来での治療実施などが進み、アクセス拡大が期待される。これらの改善により、より健康な状態で治療開始できる患者が増え、完遂率向上につながると考えられる。
(坂巻コメント:NPCは研究機関であるが、企業寄りの組織。CAR Tは高額すぎると同時にサイトカインストーム(CRS)の問題もある。二重特異性T細胞エンゲージャー(T Cell Engagers:TCE)などの開発が進んでおり、CAR Tについて持ち上げすぎの感もある。一方、固形がんに対する細胞免疫療法としては、CAR-T細胞療法、CAR-NK細胞療法、CARマクロファージ(CAR-M)療法などもあるが、日本での開発は遅れている。)
ニュースソース
National Pharmaceutical Council: The CAR T-Cell Therapy Transformation: Understanding the Technology, Current Landscape, and Future Directions -National Pharmaceutical Council Policy & Evidence Brief. 2025:06.
https://www.npcnow.org/resources/car-t-cell-therapy-transformation-understanding-technology-current-landscape-and-future