Korean Biomedical Review、2025年9月26日記事。健康保険審査評価院(HIRA)のイ・ソヨン医薬品有効性評価課長が9月1日、HIRA、韓国医療倫理学会、韓国生命倫理学会が共催した「希少・重症疾患の治療方向と社会倫理」と題するシンポジウムで、新たな診療報酬制度設計の必要性を強調したとする。以下は、記事の内容とポイント。
- 背景・問題意識
- 希少疾病治療薬(オーファンドラッグ=対象患者数が少ない薬)が、医療技術の進展に伴って「希少」扱いではなくなりつつある。
- しかし、これらの薬は価格が非常に高く、国民健康保険制度の枠で持続可能性をどう確保するかが大きな課題になっている。
- また、薬剤メーカーには研究開発インセンティブを残す必要もある。
- 現状の統計・傾向
- 米国では、昨年承認された新薬のうち52%がオーファンドラッグ。
- 韓国でも、昨年の新薬44件のうち26件(60%)が希少疾病薬だった。
- 希少疾病患者への特別請求制度利用者が2020〜2024年で27%増加、関連医薬品費用は46%増。
- 希少薬の保険給付が国保の薬剤費全体に占める割合は、3,200億ウォン規模の薬剤費の中で34%にも上る。
- 課題・リスク
- 新薬を迅速承認しても、保険償還(給付)が遅れたり、コスト効率性の評価で給付除外になるケースがある。
- 実際、速承認された46薬のうち、5年以上追跡したところ、わずか10薬(22%)のみが延命・QOL改善が立証された。
- 安全性リスクも無視できず、例としてデュシェンヌ型筋ジストロフィー向け遺伝子治療薬「Elevydis」で複数例の死亡例が報告された。
- 提案・対策
- オーファンドラッグ向けに、証拠構築型条件付き給付制度(Evidence-Generation Conditional Coverage)を導入し、給付を認めつつ承認後実臨床データでの評価を義務づけること。
- リスクシェアリング制度や、コスト効果評価の免除制度(重篤疾患での迅速アクセスを目的とした制度)を拡充すること。
- 既存の財源とは別枠で、希少疾患薬専用の基金を設けること(例:イギリスの“InnovativeMedicinesFund”、台湾の同種基金などを参照)
- 国民・社会的合意を形成しつつ、安全性・公平性・持続可能性をバランスさせる制度設計を目指すこと。
ニュースソース
Korean Biomedical Review: HIRA calls for insurance overhaul to ensure access to high-cost orphan drugs. (by Kim Kyoung-Won, 2025.09.26)
https://www.koreabiomed.com/news/articleView.html?idxno=29122
2025年9月27日