【論説】医療技術投資評価と医療技術評価の違い

Health Affairs Scholar、2025年9月号掲載記事。医薬品を上市するためには、患者、研究者、投資家、医薬品開発者、メーカー、規制当局、医療技術評価機関など、さまざまなステークホルダーの関与が必要である。それぞれがバイオ医薬品のイノベーション・エコシステムにおいて重要な役割を担う一方、独自の視点を持ち、それぞれの目的に向かって取り組む。そこで、本稿(commentary)では、医療技術への投資家と医療技術評価機関のそれぞれの視点の違いを明らかにしている。著者らは、医療経済評価の泰斗。
以下は論文におけるそ投資家視点と医療技術評価(HTA)それぞれの特徴。

投資家視点(Health Technology Investment)

  • 焦点:未来に使われるかもしれない技術に「今日の投資」をどう振り分けるか。
  • 意思決定のタイミング:市場に出る何年も前。
  • 手法:リスク調整済みNPV(純現在価値)モデル。
    • 主な入力項目:
      • 成功確率
      • R&D費用
      • 対象患者数(アドレス可能人口)
      • アドヒアランス(服薬継続率)
      • 普及率(uptake)
      • 価格
      • 特許切れ時期
  • 特徴:動的モデル。価格や普及率は時間やライフサイクルで変動する前提。

HTA視点(Health Technology Assessment)

  • 焦点:現在使われる医療技術に「今日の医療資源」をどう振り分けるか。
  • 意思決定のタイミング:承認・市場参入の頃。
  • 手法:費用対効果分析(CEA)。
    • 主な入力項目:
      • 臨床的有効性
      • QOL(生活の質)
      • 死亡率
      • 医療システムコスト
      • 薬剤費用
  • 特徴:静的モデル。今日の価格を前提とし、将来の価格変動(例:ジェネリック参入後の値下げ)は通常考慮しない。

 

ニュースソース

Melanie D Whittington, Louis P Garrison, John Michael O’Brien, Jonathan D Campbell : How time is accounted for when modeling pharmaceutical impacts: investment vs assessment perspectives.
Health Affairs Scholar, Volume 3, Issue 9, September 2025, qxaf169, https://doi.org/10.1093/haschl/qxaf169

2025年9月24日
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