【論説】アメリカの医薬品イノベーションの優位性を確保することの重要性

JAMA Health Forum、2025年8月21日記事。アメリカは今、バイオ医薬品の研究・イノベーションで大きな“競争の瀬戸際edge”に立っている。特に、中国が創薬(drug discovery)や生物医薬品製造、抗体医薬・細胞療法など先端分野での技術を急速に伸ばしてきて、アメリカの優位性が揺らぎつつあるからだ。著者は、こうした脅威を踏まえて、アメリカがイノベーションの“切れ味innovation edge”を保つための対策を提案してる。

主な課題

  • 国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH) の研究資金削減により、学術界と政府のパートナーシップが弱まり、従来の創薬基盤が揺らいでいる。
  • 食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA) の人員削減により、審査や承認のスピードが低下している。
  • 中国は創薬から製造まで自前で行い、規模・速度・技術力の面で優位性を高めている。

提案される対策

  1. 創薬初期段階の障壁緩和(drug discovery hurdles)
    動物実験など前臨床(preclinical)段階の要件を簡素化し、人工知能(Artificial Intelligence:AI)や既存データを活用して安全性を予測。
  2. 学術研究機関(academic institutions)への支援
    大学や研究機関が前臨床や第I相試験(Phase 1 trial)に参画しやすい環境を整える。標準化された手続きやフォーマットの導入を提案。
  3. プラットフォーム試験(platform trials)の拡充
    複数の治療法を同時に評価可能な臨床試験を導入し、効率性を高める。
  4. 後期臨床試験(late-stage clinical trials)の制度強化
    FDAの強みである厳格かつ高品質な臨床試験システムを維持し、国際的な規範設定の役割を保持する。

意義

  • 米国のバイオ医薬品イノベーションの強さは、単に新薬を生み出すだけではなく、国家安全保障、公衆衛生、アンメット医療ニーズへの対応力に直結する。
  • 資金削減や制度硬直化が進めば、創薬の主導権が中国へ移るリスクが現実化する。

 

ニュースソース

Edge Scott Gottlieb (American Enterprise Institute, Washington, DC) : Securing America’s Pharmaceutical Innovation.
JAMA Health Forum Published Online: August 21, 2025 2025;6;(8):e254592.
doi:10.1001/jamahealthforum.2025.4592

 

2025年9月17日
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