【論文】GLP-1医薬品の新しい分子と適応症

JAMA、2025年9月15日公開記事。GLP-1薬(Glucagon-Like Peptide-1 medicines)の新しい分子(new molecules)と適応症(emerging indications)について、最近の研究成果を整理し、今後の展望を示している。

もともと2型糖尿病(Type 2 Diabetes:T2D)の治療薬として使われていたGLP-1受容体作動薬(GLP-1 Receptor Agonists:GLP-1RA)は、インスリンの分泌促進、グルカゴンの抑制、胃排出の遅延などを通じて血糖値を下げる作用がある。さらに、食欲を抑えることで肥満や体重過多の人で体重減少をもたらす。さらに心血管疾患や腎疾患のリスク減少も示されてきている。

  1. 新しい分子・併用療法・投与形態
    • マルチアゴニスト(三重/二重受容体刺激薬)(multiagonists)を標的にしたもの。たとえば、GLP-1、GIP(Glucose-Dependent Insulinotropic Polypeptide:GIP受容体)、およびグルカゴン(Glucagon Receptor:GCGR)を同時に刺激する Retatrutideは、48週間で2%の体重減少を示した
    • maridebart cafraglutide(MariTide):GLP-1受容体刺激薬とGIP受容体拮抗薬を組み合わせた長時間作用性複合体で、肥満かつ2型糖尿病あり・なし両方で月1回投与などで体重減少を確認
    • amylinとの併用やアミリン様作用も持つもの。例えばAmycretinは、GLP-1とアミリン受容体作用を併せ持つ一分子型で、体重減少効果がtirzepatideに近い数値を示している
    • 経口投与の検討。超冷蔵保存などの取り扱いが不要な小分子型GLP-1受容体作動薬(Orforglipronなど)があり、2型糖尿病および肥満で治験中。
    • GLP-1RAと基礎インスリンの固定比率併用療法など。IcoSema(semaglutideとinsulin icodecを週1回併用)はHbA1cの改善だけでなく体重減少や低血糖リスクの低下も示した。
  2. 主な適応症の可能性
    • 睡眠時無呼吸症候群や変形性関節症、末梢動脈疾患、肝臓の代謝性疾患などでの効果。
    • 認知症/アルツハイマー病への効果検証中。経口semaglutideが軽度の症状のある認知症患者でどれくらい進行を抑えられるか見る試験が進行中。
    • アルコール使用障害どの薬物乱用障害(substance use disorders)への応用についても観察データあり。
    • 筋肉量の維持と体組成の改善:体重を減らすことで筋肉量減少があるが、GLP-1薬治療では筋肉の質が改善したり、筋内脂肪が減るなどの効果を示す報告もある。

GLP-1薬は既存の2型糖尿病や肥満への適応を超えて、新たな病態や疾患(神経精神疾患、認知機能障害、睡眠障害、アルコール使用障害など)での応用可能性が広がっている。ただし、高齢者・虚弱者(frail)など、体力や全体の健康状態が低い人での安全性・用量‐反応関係(dose-response)の検証がまだ十分ではない。継続的な臨床試験と長期のアウトカムデータ(心血管・腎臓・肝臓など)も必要。

 

ニュースソース

Maria J. Gonzalez-Rellan (Lunenfeld-Tanenbaum Research Institute, Mount Sinai Hospital, Toronto, Ontario), et al. : New Molecules and Indications for GLP-1 Medicines.
JAMA, Published Online: September 15, 2025 doi: 10.1001/jama.2025.14392

2025年9月17日
このページの先頭へ戻る