JAMA Health Forum、2025年9月5日公開記事。
米国では、医療技術使用がもたらすアウトカムとして質調整生存年(QALY)を用いた、一般的な費用対効果評価(CEA)は、差別的として使用が禁止されている。代わりに、「差別的ではない」とされる一般化リスク調整費用対効果(generalized risk-adjusted cost-effectiveness:GRACE)が推奨されており、インフレ削減法(IRA)におけるメディケア&メディケイドサービスセンター(CMS)での価格設定では、GRACEに基づいているとされる。
論文では、従来のCEAに基づく価値に基づく薬価とIRAに準拠したGRACEに基づく薬価を比較し、医療予算への影響を評価している。モデルのインプットは、Institute for Clinical and Economic Review(ICER)が2014年から2024年の間に発表したCEAの72の医薬品に関する302のCEA結果からデータを抽出した。GRACEとCEAによる価値に基づく価格と1年間の予算インパクトを計算し、支払い意思額150,000ドルを仮定した価値に基づく価格による総医薬品支出も計算した。
GRACEで計算された価格は、CEAによる価格よりも7.5%高かった(IQR, -3.9% to 9.1%)。従来のCEAと比較して、GRACEでは重症度が高い疾患ほど薬価が高くなり、軽症の疾患ほど薬価が低くなった。24品目(母集団規模上位4分位群から8品目)はGRACEの方がコストが低く、これらの薬剤の総支出はGRACEの方が3.3%低かった。残りの45品目(人口規模下位四分位群から13品目)はGRACEにより費用が増加し、これらの薬剤に対する支出は14.7%増加した。合計すると、GRACEは総予算を2%増加させた。分析結果から、GRACEは平均して価値に基づく価格を上昇させるものの、医療費総額に対する正味の効果はごくわずかであった。
ニュースソース
Karen Mulligan (Sol Price School of Public Policy, University of Southern California, Los Angeles), et al. : Measuring the Budget Impact of Nondiscriminatory Cost-Effectiveness.
JAMA Health Forum, Published Online: September 5, 2025, 2025;6;(9):e253076. doi:10.1001/jamahealthforum.2025.3076 (オープンアクセス)