【論文】組換え医薬品の連続製造: コスト削減などを含む包括的分析

バイオ医薬品業界は、ICH Q13ガイダンスを通じた規制当局の支援と、経済的利点を背景に、従来のバッチ製造から組換え医薬品やバイオシミラーの連続製造(continuous manufacturing:CM)への根本的な転換を図っている。論文は、組換えタンパク質の生産とバイオシミラー開発のための連続製造の導入について、技術的、経済的、規制的側面について、既存論文、各国規制当局情報、世界的な導入事例を検討し、連続生産のコスト、成功事例、先端技術、規制枠組みなどについて包括的な分析を行っている。全32ページにわたる長文の論文(オープンアクセス)。以下は項目別の主な内容。

  1. 序論と歴史的背景:関連産業も含む製造アプローチの変遷
  2. ICH Q13の規制の枠組みとグローバルな(連続生産)導入に関する包括的な分析
  3. 世界市場ダイナミクスと地域別導入パターン:バイオ医薬品、バイオシミラー製造コスト分析、地域別の連続生産の導入事例も紹介される。
  4. 高度な灌流細胞培養技術とシングルユースシステム:主に「上流」プロセスと「下流」との統合、連続処理用シングルユース・バイオリアクターシステムなど
  5. 連続クロマトグラフィーシステムと高度なダウンストリーム処理:周期的向流、マルチカラム連続クロマトグラフィー、統合型連続下流処理プラットフォームなど
  6. リアルタイム品質管理のためのプロセス分析技術の導入:分析技術とデジタル統合
  7. 経済分析とグローバルな費用便益評価:設備投資分析、事業コスト構造分析、投資利益率分析と経済モデリング。連続製造システムの設備コストは、連続処理技術の複雑さと特殊性が増すため、伝統的なバッチ式設備に比べて単位当たりで一般的に高くなるとする。
  8. グローバル規制戦略の策定と実施アプローチ:各国・地域の規制要件を概説(やや具体性に乏しい)
  9. 実施上の課題と高度なリスク軽減戦略:技術統合の複雑さとシステム設計、プロセス開発とスケールアップに関する考察、組織変革マネジメントと人材開発について考察
  10. 将来の技術進化とインダストリー0の統合:継続的製造強化のための新技術・・人工知能、先進ロボット工学、ブロックチェーン、クラウド分析、デジタル・ツインズ、AI/MLプラットフォーム、サイバーセキュリティなど。
  11. サプライチェーンの統合とロジスティクスの最適化:デジタル・サプライチェーンの統合、統合サプライチェーンのコスト分析と経済効果・・コストカテゴリーとして在庫維持費、輸送費、倉庫、品質管理コスト、運転コストが示される。
  12. 世界の医療アクセスと社会的影響:製造コスト削減による医療アクセスの向上。例えば、欧州では、35%のコスト削減により150万人の追加患者が4~6年で達成されると予想されている。また、環境の持続可能性と影響評価についても検討。
  13. 戦略的実施に関する提言と今後の展望:包括的な実施ロードマップと戦略計画、重要な成功要因と導入のベストプラクティス、今後の市場展開と成長機会について検討。2024~2030年の年平均成長率CAGRは、モノクローナル抗体で8%、遺伝子治療23.5%、細胞治療25.8%、バイオシミラー18.7%などと予想される。

 

ニュースソース

Sarfaraz K Niazi (College of Pharmacy, University of Illinois, Chicago), et al.:  Continuous Manufacturing of Recombinant Drugs: Comprehensive Analysis of Cost Reduction Strategies, Regulatory Pathways, and Global Implementation.
Pharmaceuticals (Basel). 2025 Aug 4;18(8):1157. DOI: 10.3390/ph18081157(オープンアクセス)

2025年9月2日
このページの先頭へ戻る