英国、医薬品支払い制度の変更について業界と当局とで合意に至らず

英国製薬業界団体である英国製薬工業協会(Association of the British Pharmaceutical Industry:ABPI)は、2025年8月22日付で発表を行い、政府と合意して実施していた「ブランド医薬品の価格・アクセス・成長に関する自主的スキーム(Voluntary Scheme for Branded Medicines Pricing, Access, and Growth:VPAG)」の迅速レビューが合意に至らず終了したことを明らかにした。

VPAGは2024年に開始された制度であり、英国における薬剤費の持続可能性と産業成長の両立を目指す枠組みであるが、開始直後からリベート率が急上昇し、医薬品売上の23.5%から35.6%という高率に達していた。このため、2025年4月にABPIと政府は予定より早くレビューを行い、制度の調整を検討していたが、最終的に合意には至らなかった。

ABPIによれば、英国のリベート率は国際的に見ても突出して高く、フランス5.7%、イタリア6.8%、ドイツ7%、スペイン7.5%、ベルギー7.9%、アイルランド9%と比べると著しい乖離があると指摘している。また過去10年間における英国ブランド医薬品市場の成長率は年1~2%にとどまり、インフレ調整後ではむしろ11%縮小していた。他方でNHS予算は実質で33%増加しており、医薬品への投資不足が明確に浮き彫りとなっているとする。

ABPIの最高責任者であるリチャード・トーベット氏は、今回のレビューが合意なしに終結したことを遺憾としつつも、患者が革新的治療にアクセスでき、業界が持続的に成長できるよう制度改革を進める必要があると強調した。特に、医薬品やワクチンへの投資不足が長年続いてきたことが、NHSにおける革新的治療の利用を著しく遅らせていると述べ、英国の評価基準やリベート率の在り方を根本から見直すべきであると訴えた。

この発表は、英国における医薬品価格制度の持続可能性と国際競争力の確保が喫緊の課題であることを示すものであり、今後も政府と製薬業界の間で建設的な交渉が続けられることが求められている。

 

ニュースソース

Association of the British Pharmaceutical Industry: Accelerated review of VPAG concludes without agreement.
https://www.abpi.org.uk/media/news/2025/august/accelerated-review-of-vpag-concludes-without-agreement/

2025年8月28日
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