STAT,2025年8月12日記事。以下は記事の要約。
米国第2位の独立系薬局チェーンRite-Aidが破産申請を行った。これは個別的な事例ではなく、米国薬局全体のシステムの問題と言える。ジェネリック薬に関する制度的インセンティブが崩れ、地域薬局が経済的負担を一手に引き受けている。
米国人の約90%は薬局から5マイル以内に住み、慢性疾患患者は年間35〜50回も薬局を利用するなど、薬局は極めてアクセス性の高い医療拠点である。このままでは薬局だけでなく、米国医療における最も効率的で費用対効果の高いアクセス拠点を失う危険があるとし、以下の3つを提言している。
- 薬剤の販売だけでなくケアにも報酬を
薬局はしばしば原価割れで処方薬を提供しており、Medicaidの支払いが1処方あたり1ドル未満の州もある。予防接種、迅速診断・治療、慢性疾患管理など薬剤師の専門的ケアを適切に評価するため、実費を反映した最低調剤料の設定や、PBMによる薬局誘導の排除が必要である。 - 薬局業務を支える効率的なシステム構築
薬剤師の40〜60%の時間が事務作業に費やされており、AIやマイクロフルフィルメント、遠隔確認などによる業務効率化が不可欠である。こうした技術導入により、臨床業務に集中できる環境を整える。 - 薬剤師の職能を全国で最大限活用
州ごとに診療範囲や報酬が異なりアクセス格差が生じている。連邦レベルでの医療提供者認定や報酬の統一化、価値基盤型医療モデルへの統合が求められる。英国やカナダのように一般的な疾患への検査・治療・処方を認めることでアクセス向上が期待できる。
薬学部入学者数の減少、負債増、士気低下が進む中、薬剤師の医療提供者認定、適正な報酬制度、地域薬局の存続確保は喫緊の課題である。連邦レベルでの迅速な政策対応が不可欠で、先送りは許されない。
(坂巻コメント:医療システムが大きく異なるが、日本における薬局のあり方の議論の参考になりそう。)
ニュースソース
STAT: Community pharmacies are in crisis. Three things need to change.( By Rick Gates, Aug. 12, 2025)
https://www.statnews.com/2025/08/12/community-pharmacy-crisis-rite-aid-bankruptcy-walgreens/?utm_campaign=daily_recap&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-_rg742-I0m-GCo_B5IZoa-swhjbQTZ9ThHb0hHRxWJKVAuA8OpxAn0Cie6cedwbxfyvcbn8doXBcvKSzV23DYvOao-qI6LCztRjRfjD7zoXgajqUg&_hsmi=375628063&utm_content=375628063&utm_source=hs_email