日本における先行バイオ医薬品からバイオシミラーへの切替えについて検討した論文。以下は、著者抄録の翻訳。
方法:2005年1月から2024年5月までのJMDC請求データベースを用いて、17種類の生物製剤(先発生物製剤またはバイオシミラー)の処方を少なくとも1回受けた患者を同定した。先発品とバイオシミラーの割合の月ごとの傾向を明らかにした。また、研究期間中に、先発品の生物学的製剤のみを投与された患者、バイオシミラーのみを投与された患者、および先発品の生物学的製剤からバイオシミラーに変更された患者(およびその逆)の割合を推定した。最後に,医療機関の種類に基づいて,調査期間中にバイオシミラーの処方を開始した医療機関の割合を推定した.
結果:先発生物製剤とバイオシミラーの割合の時間的傾向は大きく異なる。2024年5月におけるバイオシミラーの処方比率は、ソマトロピンが13.6%、フィルグラスチムが92.5%であった。個人レベルでは、先発の生物製剤からバイオシミラーに切り替える患者の割合は低く(1.2〜14.0%)、同一患者内での切り替えはあまり起こらないが、生物製剤の新規使用者が最近バイオシミラーを開始することが多いことを示している。施設レベルでは、大学関連病院や診療所は、公立病院やその他の病院よりもバイオシミラーの導入率が高く、導入率は低かった。
結論:バイオシミラーの処方の時間的傾向および切り替えパターンは、生物学的製剤の種類によって大きく異なっていた。バイオシミラーの使用を評価・促進する際には、医療機関の種類を考慮すべきである。臨床におけるバイオシミラーの使用を増加させるためのさらなる研究と戦略が必要であろう。
(坂巻コメント:厚労科研費で実施された研究で、本来、厚労省からの委託で、切替えの互換性interchangeabilityを検討する目的の研究だったと推察される。しかし、日本で使用可能なデータソースでは、切替の実態を明らかにすることしかできない。欧米で一般的となっている先行品とバイオシミラー、異なる企業のバイオシミラー製品間での切り替えのエビデンスづくりはどうすべきか?)
ニュースソース
Minako Matsumoto(Department of Preventive Medicine and Public Health, School of Medicine, Keio University, Tokyo), et al. : Temporal Trends in the Prescription of Biosimilars and the Status of Switching from Original Biologics to Biosimilars at Individual and Institutional Levels in Japan.
Ther Innov Regul Sci. 2025 Aug 7. doi: 10.1007/s43441-025-00850-7. Online ahead of print.
PMID: 40770534 DOI: 10.1007/s43441-025-00850-7(オープンアクセス)