STA、2025年8月4日の記事で、Vertex Pharmaceuticalsが開発中の次世代非オピオイド鎮痛剤が第2相試験でプラセボを有意に上回らなかったと発表したことを伝えた1)。記事によれば、開発薬は呼ばれる。Vertex Pharmaceuticalsは、臨床試験結果を受け、VX-993の急性疼痛に対する単剤薬としての開発は中止し、慢性的な神経痛のある糖尿病患者を対象とした試験を継続するされる。
一方、VX-993は、2025年1月にFDAから承認されたJournavx(一般名:suzetrigine)に類似しているとされる。Journavxは、電位依存性ナトリウム・チャネルをターゲットとする非オピオイド性の疼痛シグナル阻害薬で、成人の中等度から重度の急性疼痛を対象とした新しいクラスの疼痛管理治療薬として承認されている。1日の薬剤費は31㌦(約4,576円、1月では約17万円)で、2030年までに年間15億㌦(約2200億円)の売り上げになるとも予測されている。
FDAは長い間、非オピオイド鎮痛剤の開発を支援してきた。FDA Overdose Prevention Frameworkの一環として、FDAは急性疼痛に対する非オピオイド鎮痛薬の開発を奨励することを目的としたドラフトガイダンスを発表し、急性疼痛状態の管理に関する臨床実践ガイドラインの開発と普及を支援するための助成金も投じているとされる2)。
さらに、STATの別の記事では、米国の痛みの専門家 は、Journavxについて、第3相試験で弱いオピオイドを上回らず、ゲームチェンジャーというよりは、「そこそこの効果」と評価していると伝えている3)。また、より安価な代替薬が利用可能であることについても警戒されているとする。
(坂巻コメント:8月5日、京都大学発の非オピオイド鎮痛薬候補が米国で臨床試験を開始することが報じられた。こちらは、ノルアドレナリン分泌促進と、VX-993とは作用メカニズムは異なると考えられるが、対象疾患の選定を始め、開発の困難さが予想される。
それでも、米国では、FDAがこの領域の開発支援を積極的に行っており、反面、日本の開発支援策に魅力が乏しいため、京大グループは、米国での臨床開発を優先したものと推察される。たしかに日本での開発では規制当局からの支援は期待できず、日本の規制当局の開発支援力(審査能力)の弱さはドラッグロスの要因ともなっている。さらには、価格設定も将来的な議論である。)
ニュースソース
- STAT: Vertex next-generation pain candidate fails Phase 2 trial.(By Jason Mast and Jonathan Wosen, Aug. 4, 2025)
https://www.statnews.com/2025/08/04/vertex-nonopioid-pain-candidate-vx993-fails-phase-2/?utm_campaign=the_readout&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-9lEXCZGYMvGCs4NLUQK5i4HC76TLD5W1b6jIQUd2H93HvDDZ0XWVWAy_NjSsGkqWzfa-tnT9Kao_qSafJDFBqEJTkGiRhSnfm7urA8AjsoUxifAHQ&_hsmi=374482897&utm_content=374482897&utm_source=hs_email - Food and Drug Administration: FDA Approves Novel Non-Opioid Treatment for Moderate to Severe Acute Pain.
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-novel-non-opioid-treatment-moderate-severe-acute-pain - STAT: Vertex wins FDA approval for non-opioid pain drug, setting stage for closely watched rollout.
https://www.statnews.com/2025/01/30/vertex-pain-drug-journavx-wins-fda-approval-non-opioid/