イタリア医薬品庁(Agenzia Italiana del Farmaco:AIFA、英文表記Italian Medicines Agency)は、2025年7月14日、医薬品の「革新性」認定基準を再定義したことを発表した1)。
イタリアにおける革新性の評価、革新的医薬品の地位の付与は、AIFAとその科学経済委員会(Commissione Scientifica ed Economica:CSE、同Scientific and Economic Committee)によって行われる。このステータスは、企業が提出する治療ニーズ、治療上の追加的便益、主張を裏付けるエビデンスの質の評価を前提としている2)。
今回の発表は、治療上の革新性を認定するための要件を書き換えるもので、現実に代替治療法のない疾患や、すでに市販されている医薬品と比較して治療上の付加価値のある医薬品を認定するためのものであるとされる。(プレスリリースでは、薬剤耐性菌のための新規抗生物質・抗菌剤が中心と思われる。)
革新性を評価する際には、医薬品の前臨床および臨床開発が主にイタリアで開発・実施されることが革新とされる可能性が大きい。また、「革新性ステータス」によって、地域フォーミュラへの自動組み入れによる償還可能性への即時アクセス、「革新的医薬品基金(Innovative Medicines Fund)」を通じた資金へのアクセス(全13億。うち1億は抗生物質の予備に充てられる(単位が記載されていないが、ユーロか?ユーロとして換算すると前者は約2223億円))、病院による迅速な調達が可能になるとされる。
革新性の内容は以下の通り。
- 治療ニーズTherapeutic need:既存の治療法が存在しない、または有効性・安全性が不十分な疾患に対して、有用な治療法の必要性がある場合
- 治療上の追加的便益Added therapeutic benefit:5段階(最高、重大、中等、小さい、なし)
- エビデンスの質Quality of evidence:4段階(高、中、低、非常に低)。希少疾患および超希少疾患に対しては、低いエビデンスの質でも革新性が評価されうる。
なお、世界保健機関(WHO)の分類において多剤耐性菌への感染時にのみ使用が推奨される「リザーブ(Reserve)」抗菌薬については、個別に革新性を評価されることはない。また、2025年より、自動的に革新的医薬品ファンドに組み入れられることとなり、これは薬剤耐性(AMR)対策の強化を目的とする。
革新的医薬品は革新的医薬品基金へのアクセス条件は以下の通りである。
- アクセス可能期間:最大36か月間
- 対象となる疾患:重篤であり、かつ中〜低頻度の疫学的影響を持つ疾患または病態
- 申請要件:製造販売承認(MA)を有する企業は、当該医薬品が特定の適応症において、既存治療と比較して以下の効果を示した場合、革新性の認定を申請可能:
- 完治をもたらす
- 致死的または潜在的に致死的な合併症のリスクを低減する
- 疾患の進行を遅らせる
- 患者の生活の質(QOL)を改善する
ニュースソース
- Italian Medicines Agency:AIFA redefines the criteria for awarding the “innovativeness status” to medicines.
https://www.aifa.gov.it/en/-/aifa-ridefinisce-criteri-attribuzione-innovativita(英文) - Italian Medicines Agency:Innovative medicinal product.
https://www.aifa.gov.it/en/farmaci-innovativi(イタリア語)