カナダはバイオシミラーの第III相臨床試験の要件を削除するガイドライン案を公表

GaBI onlineニュース、2025年7月22日。2025年6月10日、カナダ保健省(Health Canada)は「バイオシミラー生物製剤に関する情報および申請要件に関するガイダンス(2025年改訂案)」を発表し、同年9月8日までの意見募集を開始した。本改訂案の中心は、従来求められていた第III相臨床試験による有効性・安全性の証明を不要とする提案である。

従来、バイオシミラーと参照製剤の間に有意な差がないことを示すために比較臨床試験が基本とされていたが、新たな案では、比較臨床試験は原則不要とされ、代わりに比較薬物動態(PK)試験および安全性・免疫原性に関するデータが求められる。また、安全性評価や免疫原性に特化した設計の試験データも追加可能とされている。

本改訂案では、バイオシミラー承認に際しては「高度な類似性」を実証するための品質比較試験の重要性が強調されており、適応症ごとに科学的根拠を詳細に示す従来の要件は簡素化された。加えて、添付文書においてバイオシミラー自体の比較試験データを記載する必要はなくなり、将来的には生物学的同等性や臨床的同等性に関する主張が可能となる余地も示された。

この動きは国際的な潮流とも一致しており、2025年4月には欧州医薬品庁(EMA)が比較臨床試験の必要性に疑義を呈するリフレクションペーパー案を公表している。また、米国では2025年4月にトランプ大統領がバイオシミラー承認の迅速化を求める大統領令に署名し、同趣旨の法案も提出されている。

これら一連の動向により、各国でバイオシミラー承認における臨床試験要件の緩和が進展しており、今後の国際的な開発戦略にも大きな影響を与えると見込まれる。

 

表1:カナダ保健省のバイオシミラー医薬品の申請要件:現行と変更案
既存のガイドライン新ガイドライン案
臨床有効性試験
ほとんどの場合、バイオシミラーと参照生物学的製剤の間の有効性と安全性における臨床的に意味のある違いを除外するために、比較臨床試験が重要である。 臨床的に関連性のあるPDエンドポイントがある場合など、必ずしも有効性試験が必要でない場合もある。 そのような場合には、科学的な正当性が必要とされ、安全性と免疫原性の比較データが必要とされる。
臨床効果と安全性の比較試験
ほとんどの場合、臨床効果と安全性の比較試験は必要ない。 安全性及び免疫原性の比較データは依然として必要であり、比較臨床薬理試験で収集されるべきであるが、他の試験デザイン、例えば安全性及び/又は免疫原性に特に焦点を当てるようにデザインされた試験で収集されたデータで補足することができる。 有効性及び安全性の比較臨床試験が必要と判断された場合、スポンサーはバイオシミラー医薬品の申請における臨床試験の目的を説明する根拠を示すべきである。

 

ニュースソース

GaBI online: Canada poised to remove requirement for Phase III trials for biosimilars.
https://gabionline.net/guidelines/canada-poised-to-remove-requirement-for-phase-iii-trials-for-biosimilars

(ガイドライン)

 

2025年7月23日
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