【論文】GLP-1肥満治療薬への安価なアクセス:米国における市場行動と政策解決策を導く戦略

グルカゴン様ペプチド1(Glucagon-like peptide 1 : GLP-1)受容体作動薬およびGLP-1/胃抑制性ポリペプチド(GLP-1/gastric inhibitory polypeptide : GIP)受容体作動薬は、体重減少とそれに伴う健康上の利益をもたらし、それが長期にわたって持続すれば、集団の健康を著しく改善する可能性がある。本論文の掲載誌は、米国の 臨床経済評価研究所(Institute for Clinical and Economic Review: ICER)が出版しているものであるが、ICER自身、これらのカテゴリーの治療薬の正味価格が米国市場における妥当な費用対効果レベルを満たしていると判断している。その一方で、潜在的な使用者の数は、今後5 年以内に年間1,000億ドル以上に達するとも推定されている。

そこで論文では、米国の医療システム全体が、これらの治療薬を手頃な価格で公平に入手できるようにするための、新たな市場アプローチと政策改革を分析し、各アプローチの相対的な利点、障壁、そして予期せぬ結果の可能性について検討している。

具体的には、GLP-1受容体作動薬、GIP受容体作動薬(配合薬も含む)の上市状況、保険適用と財政影響(米国保険プランでの保険適用拒否の事例も含む)、処方管理の方法、医療機関のネットワーク管理、支払い方法について紹介している。

処方管理の方法については、①適用基準として、BMI & 臨床的併存疾患、臨床的または遺伝的要因の追加、生活習慣の管理、保険適用期間管理があり、②フォーミュラリー管理として、単一のGLP-1薬のみを対象とする、抗肥満薬によるステップ療法が示されている。また、医療機関のネットワーク管理については、①オープン処方とそれに伴う利用管理の強化、②専門家ネットワークによる限定処方、③カーブアウト・クリニカル・ケア&ランプ;外部の減量管理会社への処方の3つのアプローチが紹介されている。さらに、今後の支払い方法として、①パフォーマンス契約、②サブスクリプションモデル、③数量ベースのリベートが紹介されている(具体的方法については、論文本文を参照されたい)。

一方、米国では、多くの購入者や支払者が肥満管理をPBMが提供する包括的プログラムや独立した疾病管理会社に委任している。論文では、その一つとして、コネチカット州の州職員健康保険と肥満管理カーブアウト企業であるFlyte Healthとの事例も紹介している。紹介された事例では、以下が取り組まれており、疾病管理モデルについて知るうえで参考となる。

  • 患者とバーチャルに関わる臨床専門家の全国ネットワーク
  • より安価な治療オプションが適切な患者を特定するのに役立つ臨床アルゴリズム。
  • ライフスタイル管理の一環として、食事と活動に関する介入を統合すること。
  • PMPM支払いモデルで、多くの場合、薬物使用の順守と全体的なコスト削減[79]を保証すること。

さらに連邦政府による政策介入の可能性として以下が示されている。

  • メディケアにおける肥満治療薬の保険適用によるアクセス改善
  • USPSTFの活動を通じて民間保険におけるアクセス改善
  • 積極的な連邦薬価交渉によるコスト削減
  • 肥満治療の民間保険適用に連邦補助金を提供することによるコスト削減
  • 製薬会社からGLP-1製剤をライセンス供与することによるコスト削減

 

ニュースソース

Steven D Pearson (Institute for Clinical & Economic Review, Boston, MA), et al. : Affordable access to GLP-1 obesity medications: strategies to guide market action and policy solutions in the US.
J. Comp. Eff. Res. (2025) e250083 https://becarispublishing.com/doi/10.57264/cer-2025-0083 (オープンアクセス)

 

2025年7月16日
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