【論説】10年後の米国バイオシミラー市場

Nature Reviews誌、2025年7月9日記事。現在、米国では14品目のバイオシミラー医薬品が上市され、バイオシミラー医薬品の処方によって360億米ドルを節約し、2023年だけで124億米ドルを節約したと推定されている。さらに、バイオ製剤へのアクセスはバイオシミラーによって拡大し、4億9,500万日分の治療が追加されたと推定されている。しかし、バイオ市場は、先行品(リファレンスあるいはオリジネーターという)メーカーによる特許戦略、フォーミュラリー防衛などのハードルもあり、国FDAが20のリファレンス製品に対して承認した75のバイオシミラーのうち、商業的に発売されたバイオシミラーは50に過ぎない。論文では、バイオシミラー採用に影響を与える要因とバイオシミラーのパイプラインと展望について考察している。

  1. バイオシミラー採用に影響を与える要因

2010年の「生物製剤価格競争法(Biologics Price Competition and Innovation Act)」に基づく薬事承認プロセス、2022年の「インフレ削減法( Inflation Reduction Act:IRA)によるバイオシミラー使用に対するインセンティブについて説明している。

また、先行品メーカーによる市場防衛策としてのリベートや共同保険料、さらにはノーブランドバイオ医薬品(いわばバイオAG)とノーブランド品によるリベート戦略が解説されている。もう一つ、先行品およびバイオシミラーメーカーそれぞれによる米国における特徴的な戦略が大手薬剤給付管理組織(Pharmacy Benefit Manager:PBM)との共同(プライベート)ブランド戦略がある。これらの市場戦略の具体策とともに、各製品での市場浸透率がデータで示されている。

  1. バイオシミラーのパイプラインと展望

2025年から2029年の間に、60の生物製剤が特許保護を失うことになっている。バイオシミラーが開発後期にある先行品をみると、大部分は2024年の米国での売上高が25億ドルであるが、一方で、価値の低いバイオ製剤のバイオシミラーの開発は低調である。上記のノーブランドやプライベートブランド戦略が早期の市場席捲が予想され、特に、自己注射可能な薬局市場がその中心になるとしている。

(論文Supplementary informationとして、FDAが承認したバイオシミラー全製品およびそれらの先行品の売り上げがデータとして示されている。)

 

ニュースソース

Kritika Chaudhari & Duncan Emerton: The US biosimilars market after one decade.
Nature Reviews. doi: https://doi.org/10.1038/d41573-025-00101-2

 

2025年7月15日
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