英国政府は、2025年7月3日、英国国民保健サービス(National Health Service :NHS)イングランドの10ヵ年保健計画を発表した(参考:英国NHS、10か年計画)。これに関連して、国立医療技術評価機構 (National Institute for Health and Care Excellence:NICE)は、同日(7月3日)、NICEの最高責任者であるSam Roberts博士のブログとして、「NHS10ヵ年計画によりNICEは患者により良い治療をより早く提供できるようになる」と題する10か年計画を歓迎する意見を公開した。「納税者にとっての価値を確保しつつ、患者が最良の治療をより早く受けられるよう支援するNICEの役割が、この計画で強化されたことに勇気づけられる」とし、特に以下3点を歓迎するとしている。
高インパクトなヘルステックの地域格差(postcode lottery)の解消
- デジタルツール、診断機器、医療機器を医薬品と同等の財政的扱いにする方針を歓迎。
- 導入が進むことで、AIトリアージや若者向けのデジタル行動療法などの効果実証済みの技術が全国に普及。
- 優先されるのは、長期待機者へのデジタル精神療法など、NHSの最も緊急性の高い課題に応える技術。
- これらの変更は2026年4月までに実施予定。
医薬品へのアクセスの迅速化
- MHRA(医薬品・医療製品規制庁)と連携を強化し、評価プロセスを迅速化。
- 科学的助言の共有とスケジュールの調整により、MHRAとNICEの判断の重複を減らし、同時期に結論が出るように調整。
- 結果として、安全で効果的な治療への患者アクセスが早まる見込み。
既存治療の価値最大化
- NICEの役割を拡大し、臨床パスの再評価を通じて治療の価値を高める。
- 具体策:
- 効果的治療の適応拡大によるアクセス向上。
- 同一疾患に複数選択肢がある場合の最初の選択肢に関する明確な助言。
- 効果が限定的な技術の段階的廃止により、将来のブレークスルーに財源を確保。
- 新評価プロセスは、全国共通の薬剤フォーミュラリ(処方リスト)整備にも貢献。これにより地域間格差が是正される。
NICEのブログでは、あまり明確に語られていないが、英国の業界紙HSJは、NICEは、NHS改革によるNICEの役割強化で、費用対効果の低い多数の医薬品やその他の治療法の使用を撤回する予定であると述べたと報じている。さらには、これまでの地域フォーミュラリーが、患者が全国で一貫した質の高い医療を受けられるようにするという観点から「意味をなしていない」とし、2028年までに「単一の全国処方箋」(single national formulary:SNF)を作成することを提案しているとしている。
ニュースソース
- National Institute for Health and Care Excellence: NHS 10 Year Plan empowers NICE to get patients better care, faster.
https://www.nice.org.uk/news/blogs/nhs-10-year-plan-empowers-nice-to-get-patients-better-care-faster - HSJ: Exclusive: NICE to remove approval from scores of drugs for first time.
https://www.hsj.co.uk/quality-and-performance/exclusive-nice-to-remove-approval-from-scores-of-drugs-for-first-time/7039598.article
2025年7月4日