オリジネーターの生物学的製剤と競合する後続バイオ医薬品(follow-on biologics:FOB)として、「バイオシミラーBiosimilars」、「バイオベターBiobetters」、そして新しいカテゴリーとして「バイオパラレルBioparallels」を定義し、これらの経済的価値、アクセス、製品市場の特性と課題等について論じた論文。
バイオシミラー:20年近くの経験があるものの、互換性、スイッチに関する懸念が、今多く残されている。
バイオベター:「薬理学的特性や転帰を改善した既存の医薬品から設計された製剤」と定義している。市場によっては、規制当局から新薬とみなされ、特許の独占権を保持し、標準品の独占権の失効を待つ必要がないこともある(例として、インフリキシマブ皮下注製剤をあげている)。
バイオパラレル:著者らが新たに提唱した概念。先行品と比べ、臨床上の有効性・安全性に優位性がありながら、低価格で先行品やバイオシミラーと競合する製剤(例として、PD-1阻害薬のtoripalimabとtislelizumabをあげている)。近年、中国がこのクラスの製品の開発を進めていることに注目している。
論文のキーポイントは以下の通り。
- より低価格の生物学的製剤(FOB)で患者を治療することによるコスト効率は、より多くの患者に予算中立的な治療アクセスを提供し、患者の公平性を高めるために利用することができる。
- これらのFOBは、患者、臨床医、支払者に、高価格のオリジネーター製品に代わる手頃な選択肢を提供する。 しかし、コモディティ化とさらなる価格引き下げ圧力の可能性を考慮しなければならない。
- 医療制度が比較的充実している国々におけるFOBの潜在的な過剰能力は、低・中所得国の患者に対する生物学的治療の機会を生み出している。
(坂巻コメント:論文としての分析は十分とは言えないが、多様なFOB市場という概念は興味深い。また、FOBの多様化は、イノベーターも含む今後の世界的なバイオ医薬品供給力への影響も考慮すべきことを示唆していると思われる。)
ニュースソース
Ivo Abraham(Matrix45, LLC, Tucson, AZ, R. Ken Coit College of Pharmacy, University of Arizona, Tucson, AZ, USA), et al. : The Clinical and Economic Value of Follow-on Biologics: Biosimilars, Biobetters, and Bioparallels.
Br J Hosp Med (Lond). 2025 Jun 25;86(6):1-7. doi: 10.12968/hmed.2024.1036. Epub 2025 Jun 4. PMID: 40554440 DOI: 10.12968/hmed.2024.1036(オープンアクセス)