【論文】(米国)支払者は薬局にPTP包装の調剤を奨励すべき

American Journal of Managed Care誌2025年6月2日掲載論文。米国では、ボトルのまま患者に手渡す「パッケージ調剤」が一般的だが、いわゆるPTP包装(米国では「ブリスター包装Blister-Package」という)での調剤により、慢性疾患の服薬アドヒアランスが向上し、その結果、医療資源の利用と医療費の削減につながるとしている。ところが、薬局において、今までのワークフローを変えるなどの手間があり、PTP包装での調剤は進んでいない。そこで論文では、支払者が医療費削減による資金の一部を薬局のPTP包装調剤にインセンティブを与えるなどを提案している。

また、PTP包装調剤による患者QOL、医療費、服薬アドヒアランスなどへの影響についての先行研究の情報源としても有用。

(坂巻コメント:日本では、大半はPTP包装であるが、一方で、服薬アドヒアランスが高くなると考えられるカレンダー包装について、(厚労省の少量多品目見直しの一環とかもあって)製造中止が相次いでいる。一方で、10錠包装が主流となっていて、薬剤師はハサミでPTP包装をチョキチョキ切って調剤するということが行われている。患者は、服薬したかわかるようにカレンダーに入れたり、ピルケースにいれるなど、これまたムダなことが行われている。なぜ、週単位での処方とカレンダー包装での調剤を標準にしないのか?)

 

以下、論文の要旨。

服薬不遵守Medication nonadherenceは、急性および/または慢性の薬を服用している患者の間で広まっている。 服薬不遵守は、より悪い健康アウトカム、死亡率の増加、支払者や医療システムのコスト増と関連している。 服薬アドヒアランスの低下には様々な要因が関与しているが、その中でも主な理由は「服薬忘れforgetfulness」である。

支払者は患者の服薬アドヒアランスを向上させ、疾病管理を強化することで医療費全体を削減することに権益を持っており、通常、服薬アドヒアランスの向上を目的としたプログラムやイニシアチブを提供している。

様々な病態において服薬アドヒアランスと患者の転帰を改善することに成功した介入のひとつに、患者の薬剤をブリスターパックに入れるというものがある。 ブリスターパックの成功を実証するエビデンスは数十年分もあるが、米国では長期療養の場以外での利用は限られている。

ブリスターパックは臨床上の転帰を改善する可能性があるとしても、薬局がこの取り組みを実施しなければならないし、しなければ医療費削減による金銭的節約は見込めない。また、患者の転帰は改善されるかもしれないが、潜在的な新しいワークフローを導入するために必要なコスト削減、および/または追加的なコストの相殺を行うことはできない。

従って、支払者は薬局が医薬品をブリスターパックに入れるようインセンティブを与えることを検討すべきである。 支払者は医療費削減によるコスト削減を実現できるため、その資金の一部を薬局のブリスターパックに再投資したり、ブリスターパック包装を行う独立薬局に優先契約やネットワークステータスを提供することで、住民の健康増進に役立てることができる。

 

ニュースソース

Eric P. Borrelli(Becton, Dickinson and Company, San Diego, CA)et al. : Should Payers Incentivize Pharmacies to Blister-Package Chronic Medications?
The American Journal of Managed Care,  June 2025, Volume31, Issue 6, Pages: 261-264

https://www.ajmc.com/view/should-payers-incentivize-pharmacies-to-blister-package-chronic-medications-?ekey=RUtJRDo4RUYxMTRDRC0zMjk5LTQxNzYtOThDMC1GMjMyNzgyNDZFNEM%3D&utm_campaign=emailname&utm_medium=email&_hsenc=p2ANqtz-8l-bVTDwi61N5hlBZP3imYg7cXcrU4KYzgv5JONVgLrzQ9dBrd4sdELQEOoBEUWPALrcoDBZkHM-ZDgbj3rHHxRgYPnMvZUyHUUjBneb07jxU6i_k&_hsmi=368751706&utm_source=hs
(オープンアクセス) https://cdn.sanity.io/files/0vv8moc6/ajmc/d60c67af74b038aac6c248da2625030ec03b7820.pdf/AJMC_06_2025_Borrelli_final.pdf

2025年6月30日
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